1994年、当座預金以外の「預金金利自由化」が完了
2.預貯金など
(1)主な預金と特徴
日本の個人金融資産は約1、700兆円ありますが、その5割以上が預貯金、いわゆる貯蓄型商品で運用されています。典型的には銀行のスーパー定期預金(自由金利型定期預金)でしょう。この「スーパー」には歴史的な意味があり、日本の預金金利が徐々に自由化されてゆく時にできた商品がこのスーパー定期預金でした。
現在では預金金利は当座預金に利息を付けてはいけないという規制を除いて自由化されていますので、スーパー定期がごく普通の定期預金商品になってしまったということです。日本に限らず、かつては世界各国で預金金利は規制されて意図的に低く抑えられていました。そうして銀行の預金金利競争を防ぎ、銀行の経営を安定させていたのです。日本もそうでしたが、高度経済成長が終わり、金融自由化の波が欧米から押し寄せてきて預金金利は段階的に自由化され、前に述べた通り、1994年に当座預金以外の預金金利自由化が完了しました。
つまり、現在の預金金利は短期金融市場の金利とほぼ同じ水準が付いています。このきっかけとなったのが、MMF(マネー・マーケット・ファンド)という米国の投資信託です。この商品は米国で開発された商品で、米国の金融革命のさきがけとして1974年に証券会社から発売された短期の有価証券で運用して短期金利の水準の収益性をもちながら解約が自由という投資信託です。これにより銀行の預金は魅力がなくなり、資金がMMFに流出し、米国の金利自由化が進みました。
日本でもそうした自由化の影響を受けて金利の自由化が始まりました。規制金利の時代は、銀行は低金利で預金を集めて短期金融市場で運用するだけでも利益が得られましたので預金集めが大きな仕事でしたが、現在では預金金利の魅力は銀行にはないのです。金利規制の緩和は預金者にとっては歓迎すべきことであります。
そもそも、預金を集めて短期金融市場で運用するだけで利益が得られるということ自体、金利規制がなくては起きない状況であり、銀行に利益が誘導されていたといえます。
ところが、日本は1990年代から不況の打開のために日本銀行の金融政策が金融緩和政策となり、金利の水準が下がり、ゼロ金利の時代、そして、現在のマイナス金利政策の時代も含めて低金利の時代が長く続いているので、この金利自由化のメリットを預金者が感じることはないのが実情でした。
しかし、これからは変わってくるでしょう。日本銀行の金融緩和政策によりインフレが起これば、やがてそれに見合う水準での金利上昇が起こります。その金利の水準はインフレと実質経済成長率の合計の値になるのが普通と考えられています。そうすると金利が自由化された銀行預金はこうした金利と同じ水準になります。
また、同じく自由金利の大口預金定期は、金額1、000万円以上から預け入れ可能で、実際の適用金利は相対交渉で決定され、自由度の高い預金となっています。
さて、ここで固定金利と変動金利について述べたいと思います。固定金利は運用開始から終了まで金利が変わらないことで、変動金利は市場金利の変化に応じて商品の金利が変動することです。一般的には定期預金は固定金利で期間も1年が大半です。それに対し、ゆうちょ銀行の定額貯金は変わった商品性を持っています。これは、かつては多くの方に知られていたのですが、定額貯金は半年複利で6カ月を経過すると最長10年の満期まではいつでも解約ができる商品です。
これは専門的にはプット・オプション(売る権利)が付いた商品と考えられており、銀行の期日指定定期預金と同様とされています。景気が回復し、金利が上昇すれば、定額貯金をしている人は解約して新たに高い金利で預け入れをすれば良いわけで、預金者に好都合な商品として有名でした。日本銀行のインフレ目標の実施により、今後金利が上昇する可能性が高くなりましたので、再びゆうちょ銀行の定額預金の人気が高まる可能性があるといえます。
元金が雪だるま式に増えていく「複利計算」
(2)金利(1年複利)の計算
複利計算とは、元金によって生じた利子を次の元金に組み入れ、元金だけでなく利子にも次期の利子がついていくという計算の方式で、いわば雪だるま式に増えていく計算のことです。これが半年複利ですと、そのスピードは速く、ゆうちょ銀行の定額貯金はこの点で大変有利な商品設計となっています。
複利計算については、「72の法則」が有名です。複利で運用して元本が2倍になる利率と運用年数には、概算で、
利率(複利)×年数=72
という法則があることがわかっています。
たとえば、年数を10とすれば利率は約7となり、金融資産を10年で2倍にするには約7%の利率で運用しなくてはならないとわかります。