代理店には「もっと価格を下げてください」と言われ…
このまま手をこまねいているだけでは、地場産業は間違いなく消滅に追い込まれてしまいます。愚直に仕事を続けていたら、いつかきっと消費者も戻ってきてくれる。そんな根拠のない希望に運命をゆだねることはあまりにもリスキーです。
では、地場産業が生き残るためには、どうすればいいのでしょうか。そのためにまずするべきことは、現実としっかり向き合うことです。現状を正しく把握し、どのように改革するべきか、また、なぜその改革が必要なのかを理解できなければ、効果的な対策をとることは不可能だからです。
木製家具業界を例にとると、1974年当時、飛騨地方に76社もあった木工家具メーカーは現在、25社にまで減っています。どこの会社もバブル崩壊後の不景気の中で売上が下がり、さらにリーマン・ショック以後の世界経済の冷え込みや円安の流れもマイナスに働いたのです。私が社長になった時、私の会社の売上は最盛期の半分程度に落ち込んでいました。
そんな状況でも、代理店からかけられる言葉は「もっと価格を下げてください。下げないと扱えません」です。家具はかさばる商品なので在庫を保管するための広いスペースが必要になります。家具の代理店は広い倉庫を所有しているところが多く、家具の在庫を豊富に抱えることができるため、メーカーから頼られていました。
価格で対抗しは、いずれ「ジリ貧」に追い込まれる
私の会社の場合は、北海道地区担当が1社、東北に1社、関東は市場が大きいので4、5社、それと名古屋、大阪、広島、福岡に1社ずつ専属代理店がありました。それらの代理店に小売店との対応を任せて、二人三脚で営業してきました。
私の会社が契約していた代理店は、市場の動きにとても敏感でした。大手メーカーの量産家具に価格で対抗しようと、時には原価を割るような要求をしてくることもありました。
かつての私の会社は、見込み生産で在庫をたくさん抱えており、なんとか売り切らなければなりませんでした。そのためにはどうしても価格で勝負しなければいけないということで、原価割れの事態も発生してしまったのです。
価格競争を続けていくことも、経営戦略のひとつといえばそうかもしれません。しかし、中小の地場産業が、大手企業と同じ土俵で真っ向勝負をして勝てるはずがありません。そんなことを続けていれば、いずれジリ貧に追い込まれてしまうのは目に見えています。
だから、価格競争はせず、付加価値を高めるなど価格以外の部分で勝負できるようにする対策をとらなければなりません。そのために、抜本的な改革が必要なのです。