前回は、地場産業の活路を拓いた「ふたつの意識改革」について説明しました。今回は、木材の個性を生かして市場を開拓した、地場産業の力を見ていきます。

「木目の美しさ、節の存在感を大切にする」という発想

それ以外にも「森のことば」の誕生は、私たちに新鮮なショックを与えてくれました。それは「初心に還る」といってもいいような感覚でした。

 

そのひとつは、節や木目を活かすということ。

 

木工家具メーカーなのですから、そんなことはあたり前だと思っていましたが、「森のことば」を手がけてから、私たちは改めて木目の美しさや節の存在感を大切にしようと思うようになりました。

 

木工家具の良さは、目にも優しく手にも馴染む自然の風合いにあると感じた私は、ウレタン塗装でコーティングして、つるつるピカピカに仕上げるそれまでの家具の塗装も見直しました。それでは「森のことば」の本領が発揮できないと思ったからです。

 

採用したのは、ナチュラルなオイル仕上げ。亜麻という植物の実から採れるアマニ油を染み込ませ、拭き取り、仕上げます。小さな子どもが舐めても、そのまま廃棄してもいいように、有害な物質はひとつも含まれていません。見た目にも身体にも環境にも優しい塗装です。

 

その分、がちがちにコーティングする塗装に比べたら、家具はキズも汚れもつきやすい。それでも自分でメンテナンスできるのが、オイル仕上げの楽しいところです。

 

小さなキズなら使っているうちに自然と目立たなくなっていきますし、使いながらついたキズやシミは味わいに変わります。ちょうど陶器のキズや補修した部分が「景色」として味わいになるように。

伐採後、木は山で生きた時間と同じ年月を生きる

買った時が最高なのではなく、使い続け、古くなってこそより良くなる家具。味わい深くなる家具。自分自身に近づいてくる家具。「森のことば」はそんな家具を目指しました。本来、木は伐られてから、それまで山で生きた時間と同じ年月を再び生きるといわれています。

 

60年かけて育って家具となった木は、60年の間家族を見守ってくれる。だから孫子の代まで安心して使える家具。それが「森のことば」となったのです。

本連載は、2017年7月28日刊行の書籍『よみがえる飛騨の匠』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

よみがえる飛騨の匠

よみがえる飛騨の匠

岡田 贊三

幻冬舎メディアコンサルティング

時代とともに移り変わる消費者ニーズの変化によって、崩壊の危機を迎えている地場産業。地場産業が生き残るためには「販売戦略」「製品開発」「生産体制」「後継者育成」「ブランディング」「地域プロモーション」の6つの改革…

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