高度経済成長期は「つくればつくるほど」売れたが…
1960〜70年代にかけて、高度経済成長期の日本を支えてきた地場産業。人々の生活がどんどん豊かになっていった当時は、とにかくつくれば売れる時代で、地方にも今よりはるかに活気がありました。
ところが近年、地場産業は衰退の一途をたどっています。その理由は多岐にわたるのですが、特に影響が大きいのは時代とともに移り変わる消費者のニーズです。
バブル崩壊以降、景気低迷を背景に国内の消費は大きく減退しました。私の会社がつくっている家具も例外ではありません。総務省の「家計調査」を見てみると、1世帯当たりの家具の年間平均支出は、1990年代前半には2万円近くありますが、2015年には6000円台と3分の1程度まで減っています。
消費者の消費意欲が減退する中で、各メーカーによる激しい価格競争が起こりました。国内の大手メーカーは、海外の安い労働力を使い、価格を抑えた画一的なデザインの家具を大量生産したのです。
いち早く自社生産に切り替え成功した「ニトリ」
その最たる例が、2016年に30期連続で増収増益という偉業を成し遂げた大手家具チェーンのニトリです。
ニトリが成功に至った理由は「製造小売業」というビジネスモデルにあります。今でこそ、効率性や収益性を高めるために製造工程に関わる企業を自社に取り込むことは珍しくありませんが、ニトリはいち早く商品を自社生産に切り替えて、「製造小売業」というビジネスモデルを導入しました。
その結果、外注費などのコストを抑えることができ、低価格で商品を提供できる仕組みをつくり上げたのです。さらに、デザインや品質も日本の規格で、日本人の好みに合わせたものとしているため、消費者からの支持を集めることにも成功しています。
こうして大手メーカーの大量生産品が市場を席巻するようになり、高額・高品質な商品を提供してきた地場産業は苦戦を強いられる結果になりました。そしてその傾向は、家具だけではなく、ファストファッションが一般的になった衣類など、あらゆる業界でみられるようになったのです。