金利や条件があまりよくない「第二地銀」
前回の続きです。
銀行交渉は、借りることばかりではありません。
返すための交渉も、あるのです。
借りたお金を返すのに交渉をする、
というのも、へんな話しです。
が、借りるよりも返す交渉のほうが、
数倍大きなエネルギーが必要、という事が多いのです。
ある会社の後継者が、先代以来、
長らくつきあいのあるA銀行から、
他の銀行へ、借り換える決意をしました。
金額にすれば、1億前後です。
A銀行は、いわば第二地銀です。
第二地銀とは、そのほとんどが、かつての相互銀行です。
バブル期の負債処理を背景に、第二地銀法ができ、
転換されていったのです。
信用金庫に近い存在で、
小さな商いを支える、地域密着型の銀行です。
メガバンクや普通地銀が取りにいかない、小さな商いの顧客が多いのです。
そういった顧客に便宜を図る分、金利や条件は、あまりよくないのです。
この会社では、家業時代にお世話になり、
そのまま、A銀行との取引が長らく続いていたのです。
家業から始めて、事業が拡大するにつれ、取引先も変わっていきます。
最初は近隣の商店から仕入れていた材料なども、
規模の大きな商社からの仕入れへと、移り代わってゆきます。
そのほうが、規模のメリットを享受できるからです。
銀行取引も、そうあるべきなのです。仕入れと同じなのです。
一年以上前から営業に来ている「普通地銀」に乗り換え
“他の銀行に借り換えるって、どうすればいいですか?
先にA銀行へ話しをしたほうがいいんでしょうか?”
銀行交渉をしたことのない後継者が、尋ねました。
“ダメダメダメ!
まずは新たな借り先を決めないと。
A銀行に言うとしても、そのあとですよ。”
借り換えにせよ、繰上げ返済にせよ、
うかつに相手銀行に意向を伝えるのは、厳禁です。
銀行が融資先を見つけるのに困っている今、形はどうあれ、
一気に繰上返済するとなれば、銀行は抵抗するに決まっています。
特に、第二地銀であるA銀行クラスだと、
3千万円以内程度の、そもそも小さな額の融資が多いです。
そこへ、1億前後の金額を一気に返すという話しが来れば、
何を言い出すかわかりません。
まずは、こちらの体制を整えるべきなのです。
“新規取引の営業にきている銀行、ありませんか?”
後継者にたずねました。
“来てます。B銀行がきてます。”
“いつくらいから来てます?”
“もう、一年以上になります。”
“こっちはいつもどんな対応しているんですか?”
“今のところは新規に借りる案件がないので、と、お断りしてます。”
“わかりました。
じゃあ、B銀行に声をかけてみましょう。”
B銀行は、第二地銀ではなく、普通地銀です。
規模の面からしても、A銀行よりは良い条件を引き出せます。
かといって、メガバンクのように、規模が大きすぎると、
中小企業などは存外な扱いとなります。
なので、普通地銀クラスが、借り換え先としては、いいのです。
それに、
一年以上営業に来ている、というのも、交渉しやすいのです。
というのは、結局のところ、他に新規取引候補が、ないのです。
だからしぶとく通ってくるのです。
声をかければ、話しにのってくれる可能性が高いです。
条件交渉はそのあとですが、
一年以上通っているなら、新規取引に繋げたいはずです。
銀行員にとって、新規獲得は大きなプラス要素です。
その可能性が高まれば、必死になります。
なので、こちらの希望条件を受けれてもらいやすくなります。
少なくとも、
まったく営業にきていない銀行に声をかけるよりは、
ずっといい条件を獲得できるのです。
後継者は、B銀行の担当者に声をかけました。
A銀行からの借り換え話しをすると、
“ぜひ!協力させてください!”
となったのです。
(続く)