今回は、銀行の担当者が、経理を担当している「社長の妻」に取り入る理由について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

経理を一任されている奥様の「習性」とは?

社長の奥様が経理をまかされている、
という中小企業はたくさんあります。
しかし、銀行の担当者にすれば、
そのような経理まかされ妻はまさに、蜜の味なのです。

 

経営相談の際、貸借対照表を面積グラフにします。
そのグラフ図には、さまざまな体格が現れます。
そのとき、
借入金も多いけど、現預金もかなり多い、
というケースがあります。
“借りてまで、そんなに現預金を持つことないでしょう!”
というパターンです。
で、“もしかして、銀行交渉はどなたが担当していますか?”
とお聞きします。すると、
“うちの家内が経理で、銀行交渉も担当してます。”
という答えの多いこと!

 

経理まかされ妻は、とにかく現預金をたくさん持ちたがります。
銀行員は、過去の傾向から、そのような特性をよく知っているのです。
多めに資金を借りてくれる経理まかされ妻は、
貸してなんぼの銀行員にすれば、おいしい蜜の味、なのです。
だから、
“何かあったときに、これくらいは持たれていたほうが、安心ですよ。”
“今なら御社の金利を低く設定できますし、負担が少ないですよ。”
“これくらい持っていても、邪魔にはなりませんよ。”
などと、銀行員はささやくのです。
で、“それもそうよねぇ。”となり、必要以上に借りてしまうのです。
過剰すぎる現預金に、“これで安心。”となるのです。

一番危険なのは「財務は妻、自分は売上」のパターン

その結果、重要な経営指標が悪化してゆきます。
余計な金利負担が発生し、経常利益が悪化する。
総資産がムダに増えて、回転率が悪化する。
自己資本比率が悪化し、総資産経常利益率(ROA)も悪化する。
そんなことは、おかまいなしです。
そもそも、そんなことを気にしていないから、困るのです。

 

このような、経理まかされ妻がいる場合、
現預金が多すぎることを指摘しても、社長はたいがい、
“いやぁ、家内に任せていますので・・・。”
となります。
確かにそうかもしれませんが、
要は、なんのチェックもしていないし、
それが良くないことだという認識そのものが、薄いのです。
財務は妻にまかし、自分は売上対策に奔走する。
このパターンが一番危険なのです。
結局、夫婦そろって、財務に無頓着なのです。

 

蜜に群がる銀行は、その誘惑を、エスカレートさせてゆきます。
多めの融資勧誘は、単なる小手調べです。
その誘惑が通るとなれば、次の手を考えます。
それは、投資型の金融商品です。
このパターンで、経営危機に陥る中小企業を、
いくつも見てきたのです。コワイです。


(続く)

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    本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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