成功する経営者は「目標」を明確にしている
事業再生の道筋を整理、確認するために作成する「事業再生計画書」は、いわば「宝の地図」。あなたの会社に眠っている事業再生を可能にする宝を掘り起こすことを目指すのです。
「これまでに目標を持って経営をしてきましたか?」
経営者の方にこう問いかけると、意外に答えに詰まってしまう方は多いものです。実はそれは大きな問題です。なぜなら、事業再生計画を立てるにあたっては、目標設定が必須要件となるからです。目標がなければ道筋を立てることなど到底できません。
目標設定を意識していない経営者は意外に多いものです。私の経験上、成功する経営者は必ず目標を明らかにしたうえで経営に取り組んでいます。
散歩をしていて偶然、富士山の頂上にたどりつくことはありません。富士山の頂上に行きたいという明確な目標が経営者を山頂に導きます。
それと同様に、明確な目標設定がなく、ただ目の前の仕事をしていたら、偶然に1000万円の利益が出た、たまたま自社ビルを建てることができたというケースを私は見たことがありません。
これまで目標がなかったという経営者は、今からでも遅くはありません。これから自社をどのようにしていきたいのかを改めて考え、目標をひとつ立ててみましょう。
目標対象は、具体的な利益でも、会社の規模でも、社会への貢献でも構いません。大切なのは、あなたはどういう会社をつくり上げたいかということです。
目標が浮かばないという場合は「夢」は何かと考えてみてもよいでしょう。「自社ビルを建てる」「億単位の利益を出す」というような、漠然とした夢であってもそこから経営者としての思いが見えてくるものでしょう。そして、どんな夢を叶えたいか、どんな経営者になりたいか、夢を考えることは必ずや自らのモチベーションにも繋がっていくものです。
目標や夢がないままに経営を続けていると、日々の仕事を惰性でやり続ける状態に陥ってしまいます。その結果が自転車操業に陥ってしまった今の現状に繫がっているのですから、もう一度しっかりと、「何を目標にするか」「何が自分の夢であるのか」を自分に問いかけてみてください。
目標は「具体的」かつ「実現性」を伴うものを
再生計画を立てるもうひとつの意味は、外部の人間にあなたの会社がこれからどういったことを目指すのかを示すという点にもあります。そこで、目標は具体的かつ実現性を伴うものであることも必要となってきます。
大きすぎる目標や夢を描いたあげく、それが「絵に描いた餅」で終わってはなりません。どんなに大きな目標であっても、実現への道筋を立てて実行していくことが必要なのです。
実現への道筋を立てて実行しても、必ずしも実現できるとは限りません。いや、むしろ目標とかけ離れてしまうことがほとんどだと思います。
しかし、ここであせって目標を下方修正する必要はありません。
なぜ目標を達成できなかったのか、なぜ計画通りにいかなかったのか、どこで道を間違えたのか……。軌道修正することは、決して悪いことではありません。目標と結果の現在の差を知り、その差を縮めるべく分析する過程が最も重要なのです。
[図表1]なりたい会社像(目標)を明確にする
「宝の地図」には「宝」への直接的なルートが描かれているのではありません。いかにして「宝」に近づくのか、経営者が苦悩する過程そのものが「宝」なのです。苦悩し、道を修正することで、経営者は次第に「次は何をすべきか」という打ち手が見えてくるようになります。
「宝」へのルートを描くのは経営者自身です。そして、宝を探すために試行錯誤した道を振り返ってみたとき、それこそが「宝」であったことに気づくことになるはずです。
[図表2]事業再生計画は「宝の地図」