前回は、企業再生に向けた「計画」を作成する際、専門家にどのように依頼すればいいのかを説明しました。今回は、赤字企業が「事業再生計画書」を作成するメリットを見ていきます。

融資を受けるためにも事業再生計画書の作成を

事業再生計画書をつくることのメリットのひとつに、金融機関による融資が受けやすくなることがあります。

 

金融庁が2015年に発表した「金融行政方針」において、以下の通りに融資に関する記述があります。

 

「担保・保証に依存する融資姿勢を改め、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)し、融資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑な新陳代謝の促進を図り、地方創生に貢献していくことが期待される」

 

赤字企業に対して金融機関が新規融資を渋ることは以前から変わりませんが、「担保・保証に依存する融資姿勢を改め」と記されるようになったのは大きな変化です。

 

以前から、融資に際しては保証人をつけることは必須であり、多くの場合には連帯保証人も必要とされたので、返済不能などの事態に陥った際には債務者本人のみならず、保証人にまで責任が及ぶことがありました。そうでなければ土地や建物、機械などを担保とすることが必須でした。その結果として負の連鎖が起こりやすくなっていたのです。

 

ところが、この金融行政方針によれば「事業性評価」を融資の基準にしていくという方向の大転換が行われたのです。

 

これは経営努力を惜しまない企業にとっては、願ってもないことです。一方、経営努力を行わず、ただ漫然と事業を継続している企業にとっては大ピンチとなる内容といえます。

 

融資に担保が不可欠だった時代とは、いい加減な企業でも担保さえあれば融資を受けられる可能性が大いにあった時代ということにもなります。しかしそれは一変。現代は人や物を担保として融資を受けるのではなく、いわば、やる気や会社の将来性を担保に融資を受ける時代へと大きく方向転換したのです。

適時の帳簿作成をきちんと行っているかが重要に

では一体、どうやって事業性の評価をするのでしょうか。

 

その基本となるのは、やはり適時の帳簿作成をきちんと行っているかどうかにほかなりません。考えてみれば、経営者のやる気や会社の将来性に対して融資をするにあたり、経営者が自分の会社の現状や業績を把握していないなどということがあるようならまさに問題外です。理路整然と業績や今後の見通しを説明したうえで、「今後はこんなことがしたい」とビジョンを語らなければ、説得力は生まれません。

 

こうしたことからも、やはり会社を立て直していく基本となるのは、現状分析と明確なビジョンです。そのためには、事業再生計画書をつくることがとても意味のあることなのです。

 

また、事業再生計画書をつくることで補助金が手に入るというメリットもあります。

 

例をひとつ挙げると、「中小企業投資促進税制」のようなものは積極的に活用すべきでしょう。

 

この制度は機械等の投資を行った中小企業者の税金を優遇するための制度です。具体的には、機械やソフトウエアなどに投資した際に、特別償却か税額控除が可能になるものです。対象となるのは取得価額が機械装置であれば160万円以上、ソフトウエアであれば70万円以上のもので、さらに先端設備に該当するものに関しては上乗せ措置の適用もあります。

 

最大で10%も税額が控除される可能性がある制度ですから、非常に大きな効果があるといえます。必要な設備投資をしたうえで大きな減税を受けられるのであれば、使わない手はないのですが、この税制は2017年3月31日までしか利用できません。しかし、これに準ずる新たな税制が適用されることは大いにあり得ますので、その際にはぜひ活用することを検討してみてください。

本連載は、2017年3月23日刊行の書籍『「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法

「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法

小林 優一

幻冬舎メディアコンサルティング

リーマンショック、アベノミクスを経た現在でも、中小企業は生き残りをかけた厳しい時代を迎えています。このまま手をこまねいていれば倒産・廃業を回避することはできません。しかし、多くの零細企業経営者・個人事業主は、何…

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