まずは、行動計画の重要要素「付加価値の戦略」を作成
利益と固定費を足した数字は、「付加価値」と言い換えることができます。原価(仕入れ、外注費)よりも高い額を売り上げる必要があるのですから、売上から変動費を差し引いた数字(利益+固定費)は付加価値額ということになるのです。
付加価値が固定費を上回らなければ利益を出せません。付加価値を高めるための戦略には、大きく分けて次の3つが考えられます。
これら3つを実現するにはどういった方法がとれるのか。それを考え、手書きでもよいのでまずは書き出してみましょう。これが、事業再生計画書の最後の要素である「行動計画」に繫がります。
①ユーザー評価を高める
商品に付加価値をつけるには、お客様からその商品やサービスが評価されなければなりません。高い評価が得られれば得られるほど、それに見合った価格で売ることができます。さらにお客様から一定の評価を得ることができれば、それが信頼に繫がり、リピーター確保にも繫がります。
自社で一番売れている商品は何か?
ユーザー評価の高め方はさまざまですが、次のようなことが考えられます。
●サービス
接客業では特に、他店よりも質の高いサービスが求められます。お客様一人ひとりに合わせた接客や、きめ細かな心配りなど。製造業などモノを売る仕事であっても、お客様と接する営業マンの質や、電話応対をする事務員の対応のよさなど、さまざまな面でサービス力は求められます。
サービス力を高めるためには従業員の教育や、接客マニュアルの充実などを行動計画に落とし込むことが可能です。
●商品提供の早さ
牛丼で有名な𠮷野家のキャッチフレーズは「うまい、やすい、はやい」です。急いでいるビジネスマンに向けて、スピーディーに温かい牛丼を提供する姿勢は、𠮷野家の大きなイメージになると同時に、ブランド力に繫がっています。
また製造業であっても、必要な時に必要な数だけの部品を届ける「ジャスト・イン・タイム」のトヨタ生産方式はあまりに有名です。
[図表]付加価値を高める
商品を求めるお客様に、いかに早く商品を提供することができるか、改善の余地はさまざまなところにあります。在庫管理を徹底したり、社員の動きの無駄をなくしたり、無駄な手続きを減らしたりすることも考えられます。一度、受注から商品納品までの工程を明確にし、どの箇所を効率化できるかを検討してみることも必要です。
●独自性
たとえ他社と似たような製品を扱っていたとしても、他社にはない魅力を持っているということは大きな強みになります。
そのなかの一つが、価格です。
たとえば、Aという製品をつくり続け、一つの取引先B社とだけ取引をしていた会社Cがあるとしましょう。これまでは下請けという形でB社での注文を一手に担っていたとしても、C社よりも製品Aを安くつくることができる会社が現れれば、B社との取引はすぐになくなってしまいます。さらに価格だけでなく、その製品に付加価値がついたものであれば、やはりこれも同じ結果でしょう。
●新技術・サービスの開発
これまで会社経営を続けてきたなかで、会社で一番売れている商品は何でしょうか。会社によっては、その製品の売上に頼りすぎ、新たな製品開発を怠っているところも少なくないはずです。しかし、旧来の技術やサービスだけでは、その勢いがいつ衰えていくかわかりません。
先ほどの例で言うと、C社は製品Aの価格において、他社よりも独自性がなかったため大きな取引先を失うこととなりました。しかも、主要製品はAのみ、取引先はB社のみだったとしたら、業績の立て直しは不可能です。
ひとつの製品、ひとつの取引先に専心しすぎてしまうのは、あまりにもリスクが高いといわざるを得ません。リスクヘッジのためにも、取引先は多く、さらに主力製品も2〜3種類に分散しておくこともまたひとつの手です。
商品の改良や新しい製品の開発は、新たな付加価値となります。新たな技術開発にはやや尻込みをする経営者も多いのですが、開発チームの人材を増やしたり、新たな製品開発のニーズがないかを取引先から聞き出してみることからはじめてはいかがでしょうか。