前回は、ベトナム不動産の購入にあたって、特に注意が必要なポイントについて、再度確認しました。今回は、2017年上半期のホーチミン市における不動産市況について見ていきます。

一時期の「手当たり次第購入」という流れは収束

2017年の上半期のホーチミン市での不動産売買状況について、第7回(2017年3月5日掲載)で下記のようにお伝えしました。

 

不動産については、2014年後半から急激に伸びてきたのが、ここにきて一服感が出てきている。そのため、ハイクラスのコンドミニアムについて言えば、2017年度の販売予定戸数は減少している。一方で、ロークラスのコンドミニアムの販売計画戸数は増加しており、自らの居住用として物件を希望するミドル層をターゲットにした市場も拡大しつつある。またホーチミン市周辺では、ロークラスのコンドミニアム販売が多数計画されている

 

その際、「購買層の一服感もある」とお伝えしましたが、富裕層に関しては「販売物件を吟味しながら、条件の良い物件があれば購入を考える」とのスタンスに変わっており、一時期のような、手当たり次第購入するといった流れは無くなりつつあります。

建築資材の高騰などが原因でプロジェクトに遅れも…

大きく変わったのは、ミドル層の購入者でしょう。特に銀行から借入して購入した場合、住居用で購入した物件に関しては問題ないものの、投資目的で銀行ローンを組んだミドル層は予定通りの賃貸収入がなく、銀行の支払いに追われ、原価割れで手放すケースも増えています。

 

このような状況にあるのは、ベトナム人特有の「今買わないと損をする」的な発想で、とにかくブームに乗ってあまりよく考えることなく、われ先にと購入した方達です。冷静に考えれば、昨年末から一気に大量の物件が市場に放出されたのですから、過剰供給は予想されていたことです。特に、プロジェクトが完成していない物件の引き渡しを受けても、借主は早々に飛びつくものでもありません。そのあたりを踏まえていない状況で、余裕を持った銀行借入をせずに購入すること自体が、そもそもリスクであると言えます。

 

もう一つは、プロジェクトの進捗が遅くなっているという点です。これは、プロジェクトの開発用の建築資材の高騰と、インフラ整備での地盤工事(道路を含む土木工事)の急増が原因です。資材によっては、前年度から2倍以上高騰しているものもあります。特に不足しているのは埋立用の残土で、高値傾向が続いています。

 

開発会社も資材の購入調整を含め、プロジェクトの進展を調整しています。すでに予定されていた発売開始時期を、延期、もしくは発売調整中としているプロジェクトも増えてきているのです。

ベトナム人が安値で放出する「おいしい物件」!?

そのほかに、法律上の問題もあります。ベトナムの法律では、「プロジェクトの70%はベトナム人向けに販売し、残りの30%が外国人向けに販売する」という規制が掛かっており、販売会社でも、多数を占めるベトナム人の需要動向を確認しながらの販売調整を行います。その一方、外国人はベトナムの不動産市場に大変興味をもっており、コンドミニアム、戸建て、ヴィラ、リゾート物件への問い合わせや現地視察の申し込みはひっきりなしにあるものの、完売状態が続いており、新規の売出し物件を待っている状況です。

 

企業としての進出も増加しており、ホーチミン市周辺での大規模プロジェクトが多数計画されています。特に国際空港建設予定地のドンナイ省、ミョンチャック周辺は、昨年から工事を進めているホーチミン市~ミョンチャック間の橋が来年から相次いで完成するため、国際空港の開港も見据え、大きな注目を集めています。今後、ホーチミン市周辺で最も注目されるエリアになるのは間違いないでしょう。現在はまだホーチミン市内よりは割安なので、今から投資先として検討するのも面白いかもしれません。

 

以上を踏まえて、開発会社は市場を見ながら発売開始時期を模索している状況です。ベトナム人の購買層も、様子を見ながら購入を判断しようとの流れになっており、この傾向は少なくとも年内一杯は続きそうです。ただ一方では、ベトナム人が安値で放出した物件を購入する動きも出ており、我々から見ると逆に「おいしい物件」にも思えます。

 

今年度は、短期的な流れで少し横這い下落傾向になりますが、この状況は2020年の地下鉄1号線の開業に向けて再び上昇傾向に変わると予想されていますので、逆に今が仕込み時と言えるかもしれません。


波乱含みのベトナム不動産ですが、今後とも市場動向を見ながら現地から生の情報をお届けします。

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