仲の悪さが「売りたい」という気持ちを加速させる
前回の続きです。
まず、この土地の所有者と根気よく交渉し、安く売ってもらいます。場合によっては根気は必要なく、「待ってました」とばかりに話がまとまることもあります。実は私が最初に買った戸建ても、億を稼いだ土地も、まさにこのケースでした。
前回、隣の人との仲の良し悪しという話をしましたが、隣人と仲が悪いというケースは意外と多いのです。些細なことがきっかけで先祖代々仲が悪く、何かにつけて罵り合い、喧嘩はしないまでも一切口をきかないといったことはよくあります。この仲の悪さが、売りたいという気持ちを加速させるのです。
再建築不可物件の場合、手っ取り早いのは、接道している隣地を買うことです。土地を売りたいときはまず隣の人に話を持っていくのは定石です。土地を生かそうと思えば、隣の人に買ってもらうか、隣の土地を売ってもらうかのどちらかに尽きます。
たとえば隣がお金に困っている老夫婦なら、その土地を買う交渉をする、逆にお金持ちの若い夫婦なら、自分の土地を買ってもらう交渉をするのです。この、ごく当たり前のことが、妬みや確執などによってできなくなっているわけです。
中には、「隣には絶対売りたくない」「隣の土地は絶対買わない」という人もいて、定石などあったものではありません。
そんな状況でも、その土地を安く買い上げるのがプロです。まったく違う人が隣の所有者になると、長きにわたり隣同士でいざこざが続き、確執のためか話が進まなかったのが噓のように急展開します。
相手が変われば確執もなくなる
私が戸建てを初めて買ったのも、ある大家さんから相談を受けたのがきっかけでした。その大家さんは旧知の方で、以前から他の物件への入居者の紹介や更新などもさせていただいていたのですが、「隣人とのトラブルが絶えない物件を売りたい」ということで相談にいらしたのです。
トラブルといっても些細なことで、境界線からエアコンの室外機が1~2㎝はみ出していたことが発端で何年も喧嘩腰となり、しまいには境界石をわざとずらしたとか、隣の雨どいの水が自分の土地まで流れてくるとか、収拾がつかなくなってしまったのです。
それが眠れないほどのストレスとなり、ついに手放すことにした、というわけです。おかげで、私はその戸建てを相場以下の価格で買うことができました。
買い上げてから、隣の人に挨拶に行くことにしたのですが、大家さんからは「タチの悪い人だから気をつけて」とアドバイスをされていましたので、ビールを1箱持参して直接私が行くことにしました。ところが行ってみると、その家の旦那様は留守だったので、奥様に丁寧に挨拶をして帰ってきました。
そして翌日、私の会社に、留守だった旦那様が訪ねてきたのです。私が持参したビールと同等の菓子折りをいただき、明るい笑顔でしばらく世間話をして帰っていかれました。とても感じの良い人という印象を抱き、事前に聞いていた大家さんからの情報との違いに驚いたのを覚えています。
このとき、私は気づきました。人間というのは、確執のある相手がいる限り、その泥沼にどんどんはまっていってしまうということ。そして当然、相手が変われば確執もなくなるということ・・・。
大家さんから買い上げたこの物件は、再販に出したところ高い価格で買い付けがあり、売買成立となりましたが、それを知った隣の旦那様はとても悔しがり、「私に売ってほしかった」と嘆いたのです。もうすっかり隣同士の確執はなくなっていたのです。
つまり、この経験でわかったのは、再建築不可物件でも内容によっては宝となりうるということです。