前回は、不動産業者の大きな収益源ともいわれる、 「専有卸物件」の概要について解説しました。今回は、1つの土地に「4つの異なる値段」がつけられる理由を見ていきます。

土地取引・税額計算を目的とした、4つの指標が存在

土地のことを「一物四価」といいます。同じ土地なのに4つの異なる値段がつくからです(一物六価という場合もあります)。

 

土地の値段は毎年変化していますし、景気の良し悪しも影響します。2015年度、日本でいちばん高い土地は東京都中央区銀座4丁目の土地でした。その価格は、1坪で1億1阡壱陌七捨参萬伍阡参佰六捨四圓。1坪といえば、畳2枚です。

 

「人間立って半畳、寝て1畳」といいますので、たとえば自分と奥さんの2人で寝ている場所が銀座4丁目なら、その2畳の土地は1億1173万5364円ということになります。

 

さて、なぜ土地に値段がいくつもあるのかということに話を戻しましょう。土地の値段は、相場はありますが需要と供給の関係で、絶えず変化しています。土地にかかる税金に固定資産税がありますが、これは土地や家屋を所有している人が払う、市町村などの地方自治体が賦課する税金です。

 

この税金の額が、土地の値段によって大幅に変動してしまうと税金を課税するときに困る、ということもあるのでしょう。同じ場所なのにしょっちゅう税金が変わったら納税者もびっくりしてしまいます。

 

そこで、国や地方自治体などが土地取引や税金の計算をするために指標を定めるわけですね。この指標が4つあることから、一物四価というようになったのです。

公示価格・基準地価・路線価・固定資産税評価額

その4つというのは、国土交通省が取引価格の指標として毎年1月1日時点で決める①公示価格。都道府県が地方の取引価格の指標として毎年7月1日時点で決める②基準地価。国税局が相続税や地価税の算出のために毎年1月1日時点で決める③路線価。これは道路に沿って値付けをしているもので公示価格の80%です。そして市町村や東京都が固定資産税や都市計画税、不動産取得税等を決めるために前年の1月1日時点で決める④固定資産税評価額。これは3年に1度評価替えすることになっていて、公示価格の70%です。

 

このほか、競売等で価格を決めるための⑤売却基準価額(不動産鑑定評価額)と普段の実際に取引されているその時の「時価」を指す⑥実勢価格を含めると、6つ(一物六価)ということになります。

 

この6つのうちよく使われるのは③路線価と⑥実勢価格です。土地の取引をする際はこの2つが重要な指標となりますし、固定資産税評価額も必要になってきます。税金等は土地や建物から徴収されています。土地や建物は重要かつ財産であるあかしです。銀行等の金融会社が土地を担保に取る以上、土地神話は健在です。また、それに伴い不動産屋も必要不可欠ということです。

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も知らない不動産屋のウラ話

誰も知らない不動産屋のウラ話

川嶋 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

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