今回は、スマートコミュニティづくりにおいて重要な「共有」の概念について説明します。※本連載は、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科教授で、エネルギーマネジメントシステム、再生可能エネルギーの専門家である小野田弘士氏の著書、『失敗から学ぶ「早稲田式」地域エネルギービジネス』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、地域エネルギーの重要キーワード「スマートコミュニティ」について考察します。

電気等のエネルギーを「地域で確保する」という考え方

以下の図表1は、筆者がスマートコミュニティプロジェクトに関与するきっかけとなった埼玉県本庄市の本庄スマートエネルギータウンプロジェクト、図表2で提唱している考え方のひとつである。

 

[図表1]「共有」の概念

 

[図表2]本庄スマートエネルギータウンプロジェクトのコンセプト(構想段階)

 

新しい社会システムの構築や実現を目指すのであれば、そのパラダイムシフトを、どのように組み込んでいくかを考えて然るべきである。

 

従来のまちづくりでは、「公」、つまり、公共事業などによって、道路、電力、都市ガスなどのインフラ整備がなされ、そこに民間企業が土地を取得し、建物を建て、事業を展開するという構図であった。

 

現在のエネルギー問題をはじめとする社会的な課題は、この従来の「インフラ」の考え方が変わってきている、あるいは変えていかなければいけないことを示唆している。スマートコミュニティに関する議論も同じで、地域で確保できるインフラは、地域で自立して保有することが要求されているということである。

 

それを図表1は、「共(シェア)」という形で表現している。すなわち、エネルギーを例にとると、今まで電力や都市ガスなどのインフラは、空気のような存在で「つなげば供給される」という感覚であった。それを再生可能エネルギーや未利用エネルギーを最大限活用しながら、地域で確保していかなければならない社会に変化しようとしている。

地域における伝統や文化、価値観などの整理も必要に

わかりやすい例として、地中熱ヒートポンプを挙げよう。地中熱ヒートポンプは、未利用エネルギーのソリューションとして期待されているが、住宅や建築物の付帯設備として捉えると非常に高い買い物になってしまう(単純回収年が長い)。しかし、それを付帯設備ではなく街区のインフラと位置付けたらどのようになるだろうか? 

 

街区全体に地中熱のインフラを整備し、当該街区に進出した建築物は、必然的に地中熱から採熱される状況を創出する。トータルで要するコストは同じでも、未利用エネルギーの波及効果という観点で意味は大きく変わってくる。分散型エネルギーシステムも同じである。

 

また、街区全体のスマート化を実現しようとすれば、当然、ICTなどを活用した新たなマネジメントシステムを構築することが必要であり、そのための新しいビジネスモデルを構築しなければならない。

 

図表2では、本庄スマートエネルギータウンプロジェクトで対象としているエネルギーやモビリティを基軸とした表現になっているが、各々の地域で、この「共」に相当する部分が何なのかを議論することも、地域との情報共有を図るうえでは有効な手段である。

 

例えば、地域における伝統や文化、価値観なども、こうした形で整理していくことが今後、必要となってくるであろう。

失敗から学ぶ「早稲田式」 地域エネルギービジネス

失敗から学ぶ「早稲田式」 地域エネルギービジネス

小野田 弘士

エネルギーフォーラム

本書は、「まちづくり」「まちそだて」を成功させる秘訣について、著者の経験を踏まえた解決策を提示します。地域エネルギーに取り組むにあたっての具体的な実例や考えを提示し、「うちでは無理」「あの自治体だからできた」の…

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