今回は、「スマートコミュニティ」の実現に向けた課題について説明します。※本連載は、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科教授で、エネルギーマネジメントシステム、再生可能エネルギーの専門家である小野田弘士氏の著書、『失敗から学ぶ「早稲田式」地域エネルギービジネス』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、地域エネルギーの重要キーワード「スマートコミュニティ」について考察します。

求められるのは「最初の一歩」を踏み出すプレーヤー

近年、注目されているスマートコミュニティプロジェクトを例に、筆者が感じている問題点と、その実現に向けて必要となるポイントを述べた。

 

現在、全国各地でさまざまな取り組みがなされつつあるが、その成否を判断するのは時期尚早と考える。先行事例の効果測定を確実に行い、地域それぞれが特徴あるプロジェクトを創出していくことが重要であろう。最後に、筆者が考えるスマートコミュニティプロジェクトが目指す方向性を提示して、本連載のまとめとしたい。

 

筆者がよく問われる質問として、「スマートコミュニティプロジェクトにおける行政と企業の役割は?」が挙げられる。

 

この質問の裏で、スマートコミュニティプロジェクトを進めていくためのポイントを問われていると推察される。それに関しては、筆者自身、明確な答えを持ち合わせているつもりである。すなわち、「覚悟」、つまり、「リスク」をとれるプレーヤーが当該プロジェクトにいるか否かでプロジェクトの成否が決まるということである。

 

それが民間企業であるか行政であるかは関係ない。我が国全体が失っているのは、新たな産業やイノベーションを誘発しようという活力である。今こそ、最初の一歩を踏み出すプレーヤーが求められているのである。

未来を思い描きながら、危機感を共有することも重要

スマートコミュニティが我が国産業にとって、起死回生の一打になるか否かは、現時点では判断できない。しかしながら、次世代のインフラのあり方を検討するスマートコミュニティを短視眼的に論じるのは危険である。

 

「将来世代が働く場所が我が国に残るのであろうか?」と筆者自身は、そんな自問自答をしながら、スマートコミュニティプロジェクトに臨んでいる。明るい未来を思い描きながら、危機感を共有することも重要である。

失敗から学ぶ「早稲田式」 地域エネルギービジネス

失敗から学ぶ「早稲田式」 地域エネルギービジネス

小野田 弘士

エネルギーフォーラム

本書は、「まちづくり」「まちそだて」を成功させる秘訣について、著者の経験を踏まえた解決策を提示します。地域エネルギーに取り組むにあたっての具体的な実例や考えを提示し、「うちでは無理」「あの自治体だからできた」の…

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