窓口の一本化、地域と企業のギャップを埋める・・・
前回の続きである。現在、進行しているスマートコミュニティプロジェクトに必要な視点としては、以下の3つが挙げられる。
①必要なのは情報の「共有化」→窓口の一本化
一見、同一エリアで展開しているプロジェクトにみえても、地権者などが複数存在する場合、個々の土地の取引ベースで話が進んでしまうことが多い。そうすると、統一感あるまちづくりが難しくなる。また、当該エリアでビジネスチャンスを伺う民間企業にとっては、必ずしもその地域に対する土地勘を有しているわけではない。
これを解消するためには、窓口の一本化を図り、その地域で起こっていることと、起ころうとしていることに対する情報を共有化することが極めて重要である。
②ステークホルダー間のギャップを埋める機能
コンソーシアム型でプロジェクトを展開する場合、常に発生することであるが、とりわけ、地域サイドと民間企業サイドの認識のずれを埋める作業は必要となる。
それを担うのがプロジェクトコーディネーターの役割であるが、地域サイドの意向を汲み上げることができ、民間企業が要求するスペックに対する専門的な知見を有することが要求される。この部分の機能が弱いと円滑なプロジェクトの進行を阻害することになる。
ちなみに、株式会社早稲田環境研究所では、この部分の機能をさまざまなプロジェクトで担おうとしている。
まちづくりは「数十年のスパン」で考えることが大事
③エリアマネジメントを含めた産学官民の適切な役割分担と設計
「まちづくり」という言葉からは、「建物を建てるところがゴール」という印象を受ける。しかし、これも従来型の発想であると捉えるべきである。
その地域に居住する人、事業を展開する事業者のほうからみれば、10年、15年は当たり前で、数十年のスパンで物事を考えなければならない。拙速な成果を求めようとし過ぎると、ハコモノを造るだけで終わってしまう。
その際に重要なのは、コミュニティが動き出したあとに、コンソーシアムを形成している産学官民が、どのような役割分担でエリアマネジメントを展開していくのかを、あらかじめ設計していくことである。おそらくこの議論は、スマートコミュニティの出口、すなわち、ビジネスモデルのあり方にも関係してくる。
これまでの不動産開発のように付加価値の低い土地を開発し、高値で売却するというビジネスモデルから、ICTやエネルギー、モビリティなどを含めた地域サービス事業やマネジメント事業によって、収益を得るというのがひとつの姿であろう。
単にソリューションを販売するというのではなく、その新たなビジネスモデルの設計も含めて検討対象としないと新しいものは生まれない。
[図表]スマートコミュティ形成へ求められるアプローチ