前回は、タックス・ヘイブンや、「持株会社に租税特典のある国」に持株会社をつくった場合、どんなメリット等があるかを地域別に解説しました。今回は、タックス・ヘイブンに子会社を設立する場合や海外信託を利用した場合のメリット等を見ていきます。

タックス・ヘイブンに子会社を設立すると・・・

【地域統括会社の設立】

地域統括会社の世界各地にあるグループ子会社などに、財務、経理、人事などのバックオフィス的なサービスを提供する会社や、グループ子会社を統括する管理会社です。こうした会社に特典を与えている国は、ベルギー、フランス、スイス、イギリス、シンガポールなどです。日本も2009年に地域統括会社制度が導入されました。

 

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地域統括会社ではないのですが、バックオフィス業務を行うサービスカンパニーについては、たとえばシンガポールでは、会社の経費の5%を利益と見なすコスト・プラス・カンパニーが認められています。

 

【金融(財務)子会社の設立】

世界の多くの大企業は資金調達、関係会社への貸付、余裕資金の運用、為替リスク回避などのため、金融子会社を租税特典国やタックス・ヘイブンに設立しています。

 

グループ会社内の資金融資で、融資を受けた会社は利子の支払いが経費となり、所得が圧縮でき、受取会社がタックス・ヘイブンにあれば利子に課税されないか、低税率で済みます。これによってグループ全体の実効税率を低下させられます。持株会社に金融会社の機能をもたせるケースも多くあります。

 

【便宜置籍船】

新聞やテレビで「パナマ船籍の○○会社のタンカーが・・・」、「リベリア船籍のタンカーが・・・」、といった記事や報道を目にすることがあります。これが便宜置籍船です。日本の船会社はもっぱら船員の人件費の削減を目的として、タックス・ヘイブンに船籍を置いていますが、税金が低率であるのも大きな理由です。

 

最近では海運会社や航空会社が船舶や航空機をオフショア会社に所有させ、その会社から船舶や航空機のリースを受け、リース料を支払うパターンもあります。

 

便宜置籍船のタックス・ヘイブンとしては、パナマ、リベリア以外にもジブラルタル、バハマ、キプロス、マン島などが有名です。こうした国は大きな船会社だけでなく、個人の豪華ヨットの船籍を置く場合にも利用されています。

 

【自家保険会社の設立】

会社が自分で保険子会社をつくって保険料を払い込み、事故発生時の巨額な保険金の支払いに備えるというものです。再保険(保険会社の保険会社)会社も利用しています。特に海外での事故発生時のリスクを引き受ける目的でタックス・ヘイブンに設立されることが多いといえます。設立のメリットは、親会社や関連会社の支払保険料が経費となること、保険会社の設立が簡単で運用方法の規制がないこと、運用益に税金がかからないこと、などです。

タックス・ヘイブンのほとんどでトラストの設立が可能

【オフショアトラスト】

オフショアトラストは海外信託という意味の単語です。信託は法人ではありません。財産を拠出する人(セトラー)とその資産を受託管理する弁護士や信託会社(トラスティ)、その信託に移された資産から生ずる利益を得る受益者の3者で成り立ちます。

 

税金対策としての観点では、欧米(英米法が適用される国という意味です。スイスには信託の概念はありませんが、スキーム的には使用されています)では、資産家の資産管理プランを立てるときに利用されます。

 

トラストの税金関係については、欧米ではトラストそのものが税金を払う主体となり、しかも税率は一般に低く抑えられます。ここまでに言及したタックス・ヘイブンのほとんどでトラストの設立が可能です。

 

たとえば、ケイマンにはスター信託、ブリティッシュ・バージン・アイランドにはヴィスタ信託があります。しかしイギリスでは、2006年の税制改正で、ほとんどすべての新規信託への資産拠出や既存信託への資産追加拠出が課税されることになってしまいました。これにより財産の払い戻しおよび信託創設から10年ごとに課税されます。

 

また、香港などの例をみると、中国への返還の2~3年前までは、返還後の政治、経済への不安から海外にトラストをつくって資産を移すことが盛んに行われていました。なかでも有名な例としては1995年の5月、華人大実業家のリ・カシン(李嘉誠)がグループ企業の持株会社である長江実業の株式を、タックス・ヘイブンのトラストに移しました。トラストの受益者はふたりの息子でした。

 

日本では、2007年に信託税制改正があり、資産を信託に移転するとき、適切な対価を負担していない受益者にはその時点で贈与税がかかることとなりました(受益者等課税信託)。

 

従来、信託そのものに課税するという規定は一部を除いてなかったのですが、法人税課税信託が創設され、受益者の定めがない信託には、受託者が個人であっても法人税がかかります。信託から利益が上がればストレートに受益者に所得税が発生します。

 

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日本人がオフショアトラストを利用する場合には、まず財産を海外に出しておく必要があります。相続人などの受益者にオフショアトラストを活用して無税で海外財産を移転する場合、トラストへの拠出者、トラストからの受益者の双方が、5年以上の非居住者である必要があります。信託財産の所在地については、相続税法10条の財産の所在地の規定によります。

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

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