前回は、IBCの利用方法について説明しました。今回は、タックス・ヘイブンや、持株会社に租税特典のある国に持株会社をつくった場合、どんなメリットがあるかを地域別に見ていきます。

租税条約を締結しているか否かで違う課税方法

タックス・ヘイブンや、持株会社について租税特典のある国に持株会社をつくると、海外の子会社からの受取配当金が非課税になったり、子会社株式を売ったときのキャピタルゲインが非課税になるので、多国籍企業によってよく利用されます。

 

日本企業が利用する場合は、マレーシアやタイなどアジアにある製造子会社と親会社との間に作る中間持株会社のケースが多いようです。

 

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以下、どのような持株会社形態があるか、地域別に見ていきます。

 

【アジア・太平洋】
●香港持株会社
香港で設立した通常の会社に持株会社の機能を持たせることになります。香港持株会社が受け取る配当は免税ですが、原則は支払国側で源泉税がかかります。これは、香港と租税条約を結んでいる国が少ないことが理由です。

 

たとえば、OECD加盟国で香港との間に租税条約を締結しているのは、フランス、日本、イギリス等だけです。しかし、香港持株会社が支払う配当には源泉徴収税がかかりませんし、保有する外国子会社株式のキャピタルゲインも香港では非課税です。たとえば、日本と香港との租税条約では、香港持株会社が日本子会社の株式を売却しても、日本では課税されない規定となっています。

 

●シンガポール持株会社
シンガポール持株会社は、シンガポール外の国にある会社の中間持株子会社となり、たとえば、傘下にインド孫会社や中国孫会社を持つと、租税条約の特典が受けられます。この例では、それぞれインドからの配当の源泉税はゼロ、中国からの配当の源泉税は5%に減免されます。またシンガポールでも免税です。

 

貸付利子の源泉税に関しては、インドからの場合は15%、中国からは10%に減免されます。シンガポール中間持株子会社がインドや中国孫会社の株式を売却し、キャピタルゲインが出たケースでも、租税条約によりインドに関しては免税、中国でも一定の条件で免税になります。シンガポール中間持株子会社においては非課税です。

 

日本とシンガポールとの租税条約では、日本の会社がシンガポール会社の子会社の場合、シンガポール会社が日本会社の株式を25%以上所有し、その5%以上を売却した場合は、キャピタルゲインが日本で課税されます。

 

●ラブアン持株会社
ラブアンの1990年事業活動法では、株式、証券、貸付、不動産を保有する活動は、非営業活動と分類され、そうした活動をするラブアン法人は非課税となります。ラブアン法人が受け取る配当は非課税で、非居住者等に払う配当や利子にも源泉税はかかりません。

各国の「資本参加免税制度」を確認する

【ヨーロッパ】
●アイルランド持株会社
アイルランドの持株会社には、キャピタルゲインについて資本参加免税制度が適用されます。株式を売却した時点で、持株会社が5%以上の持株割合を12カ月以上続けて保有していれば、免税になります。ただし子会社の所在地国は、EUメンバー国かアイルランドと租税条約を結んでいる国に限定されます。

 

海外から受け取る配当については、配当の支払いをする子会社が現地で12.5%以上の法人税率で課税されていれば、アイルランドでは免税になります。アイルランドと租税条約を結んでいる国も同様です。

 

●オランダ持株会社
オランダでの資本参加免税については、一定の要件を満たせば、オランダ法人の受取配当、保有株式譲渡のキャピタルゲイン等は非課税になります。持株会社の株式保有期間については、特に規定はありません。

 

●イギリス持株会社
イギリスでも、2009年7月からイギリス以外の外国子会社から受けとる配当は原則100%免税になっています。資本参加免税制度もありますので、外国子会社の株式売却によるキャピタルゲインは免税となります。持分比率は、実質的持分といわれる持分を10%以上、譲渡前の2年間に少なくとも12カ月以上続けて保有している必要があります。

 

イギリスの法人税率は2014年から21%に下がっていますが、日本のタックス・ヘイブン税制が適用される20%を超えているため、その適用は現時点では原則ありません。しかし、イギリスの資本参加免税制度の要件が複雑で、キャピタルゲインの免税があった場合など、日本のタックス・ヘイブン税制適用外となる否かは、イギリスの税務専門家との十分な協議が必要となります。

 

●その他の国
ベルギー、ルクセンブルク、オーストリア、スペインなどにも資本参加免税制度があります。

 

【カリブ海】
カリブ海には、すでにご紹介したバハマ、ケイマン、バミューダのほかに、バルバドス、ネヴィス、キュラソー等にも持株会社をつくることができます。

 

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次回は、その他の利用方法について見ていきましょう。
 

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

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