事業譲渡を行う場合、最後の最後まで情報が漏れないように配慮をしなくてはなりません。今回は、最終契約の締結時における情報公開の留意点について見ていきます。

キーマンへの事前告知の場合も徹底した配慮が必要

前回に引き続き、事業譲渡に必要な諸手続き「クロージング」についてです。

 

【情報の公開】
契約締結の当日または前日には、金融機関や取引先、そして従業員などの関係者に情報公開が行われますが、一部例外となる関係者もいます。もっとも大事なのは、融資を受けている金融機関です。一般的には最終契約の前に告知することになりますが、これは、経営者側が専門スタッフと相談しながらタイミングを見て伝えます。


従業員への告知は、契約の当日または前日だと述べましたが、特にキーマンとされる従業員については、あらかじめ告知しておいたほうがよい場合もあるでしょう。この場合にも、情報が漏れないように、徹底した配慮が必要です。


仕入先や得意先など取引関係企業に対しては、契約締結後に情報公開します。基本的には事業が継続するものの、請求書などの伝票、金融機関などの名義切替えも必要ですから、買い手の名義と変更する日程を通知します。

一般の従業員にはひとまず「安心してもらうこと」

キーマン以外の従業員に対しては、契約締結前日または当日に、説明会を開いて告知します。


これまで苦楽をともにしてきてたくれた従業員に対して、経営者としてはつらい思いがあるかもしれませんが、まずはこれまでの仕事をきちんとねぎらったうえで、会社は変わるけれども雇用は守られることなどを説明して、ひとまず従業員の方に安心してもらうことがもっとも大切です。


また、事業譲渡の対象とならないBAD部門の従業員に対しても、今後は特別清算で会社を整理していく方針だということや、退職金はきちんと支払われるので安心してほしいといったことなどを同時に示しておく必要があります。


赤字会社の清算の場合、GOOD部門の事業譲渡を行うとき、次回より説明をする特別清算と経営者保証ガイドラインの手続を常に念頭においている必要があります。事業譲渡+特別清算+経営者保証ガイドラインという3点セットで整理手続を行うことで、債務をきれいに処理して円滑な事業譲渡や廃業が実現すると考えています。

本連載は、2015年8月26日刊行の書籍『赤字会社を驚くほど高値で売る方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

赤字会社を驚くほど高値で売る方法

赤字会社を驚くほど高値で売る方法

山田 尚武

幻冬舎メディアコンサルティング

アベノミクスにより日本経済は回復基調にあるといわれるものの、中小企業の経営環境は厳しさを増しています。2013年度の国税庁調査によると、日本の法人約259万社のうち約7割にあたる176万社が赤字法人となっている一方で、経…

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