前回に引き続き、赤字会社の「特別清算」の手続きの流れを紹介します。今回は、特別清算終結の申し立てや登記手続きについて、留意点を含めて見ていきましょう。

債権者に「経営者の努力」を認めてもらうには・・・

協定型の場合、協定決議集会において協定が可決されるためには、出席した議決権者の過半数の同意かつ、出席した議決権者の議決権総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意が必要です。

 

債権者集会に参加できない債権者については書面を通じての投票も可能で、必要な同意が得られれば協定は可決されます。

 

協定決議集会で必要な同意が得られ、協定が可決されると、清算会社は裁判所に協定の認可の申立てを行います。裁判所は協定の法律違反や債権者の不利益といった特別な理由がない限り、協定の認可を決定します。

 

ただし、協定決議集会において、債権者から必要な同意が得られなかった場合や、協定が可決されたにもかかわらず裁判所によって不認可の決定がなされた場合には、裁判所は、清算会社に破産手続開始の原因があれば、職権で破産手続開始の決定をします。

 

債務超過会社が特別清算で会社を清算する場合、すべての債権を弁済するだけの現金があるわけではないので、会社は債権者に対し、債権のカットや条件変更を求めざるを得ません。そのため、全債権の数%しか弁済されないということもめずらしくありません。最近、筆者が担当したふたつの株式会社の特別清算の案件の場合、いずれも事業譲渡はできず完全に事業を清算するものでしたが、いずれも弁済率は十数%ありました。

 

しかし、ここまで説明してきたように、先にGOOD部門を事業譲渡して、売却代金を債務の一部の返済に充てることができれば、まったく弁済できないまま会社を廃業するよりは債権者にとってはるかによい結果になります。

 

たとえば、破産していれば弁済金はゼロですが、1億円のうち数%すなわち数百万円でも弁済されれば、債権者も経営者の努力を認めてくれるはずです。「我々に1銭も払わずに握り倒産したのではないか」と、疑心暗鬼になっていた債権者も、経営者が事業譲渡によってできる限りの現金を生み出し、それをすべて弁済金に充てたということがわかれば見る目も変わってくるでしょう。

解散後2ヵ月以内に清算が完了することはない

裁判所による協定の認可の決定後、所定の期間(概ね1か月)が経過すると、協定は確定して法的効力を生じます。清算会社は、協定の内容に従ってすみやかに弁済を行わなくてはなりません。

 

協定に基づいた弁済が完了すると、清算人は裁判所に対して「特別清算終結の申立て」を行います。裁判所は「特別清算手続の終結決定」をした後、職権によって清算会社の本店および支店を管轄する登記所に「特別清算終結の登記」を行います。ただし、この特別清算終結の登記は、解散の日から2か月以上経たないと申請が受理されないことになっています。

 

なぜなら、清算した会社は債権者に対して2か月以上の期間を定めて、公告する決まりになっているため、解散後2か月以内に清算が完了することはありません。

 

特別清算終結の登記が完了すると、商業登記簿から会社の登記が閉鎖されます。この時点で会社はきれいに消滅することになります。

 

なお、清算人は、この登記が行われてから10年間は清算会社の帳簿や事業および清算に関する資料などを保存する義務があります。これまでの流れは、第19回の「特別清算の流れ(協定型)」とあわせて確認するとわかりやすいでしょう。

本連載は、2015年8月26日刊行の書籍『赤字会社を驚くほど高値で売る方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

赤字会社を驚くほど高値で売る方法

赤字会社を驚くほど高値で売る方法

山田 尚武

幻冬舎メディアコンサルティング

アベノミクスにより日本経済は回復基調にあるといわれるものの、中小企業の経営環境は厳しさを増しています。2013年度の国税庁調査によると、日本の法人約259万社のうち約7割にあたる176万社が赤字法人となっている一方で、経…

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