特別清算の開始後、会社は裁判所の監督下に
特別清算開始の命令が出ると、裁判所の監督下に入ります。裁判所が必要と認めれば、監督委員ないし調査委員を選任することができますが、金融機関などの債権者との事前調整が十分できていれば、特に選任されないのが通例です。
注意すべきは、特別清算が開始されると会社の財産の処分、借金、訴えの提起、和解、その他裁判所の指定する行為などについて、裁判所の許可を得なければならないという点です。
解散決議をする前の段階や通常清算の段階で、会社財産の整理・処分は進んでいると思いますが、たとえば賃借人のいる不動産の処分や、抵当権のついている不動産の処分などは賃借人の退去や、抵当権者の抵当権解除の同意に案外時間がかかるものです。
そのため、特別清算の段階で不動産を処分することになった場合は、必ず裁判所の許可を得なければなりません。なお、100万円以下の財産の処分については、裁判所の許可が不要な場合もあります。
債権者の同意を取る方法は「協定型」「和解型」の2つ
債権者集会は、特別清算を実行する上で必要な報告や決議をするための集会です。「清算事務報告集会」「協定決議集会」に分類することができます。清算事務報告集会では、清算人は会社の業務・財産の状況の調査結果や財産目録などの要旨を説明すると同時に、清算の実行方針とその見込みについて説明します。
ただし、清算事務報告集会を開かなくても、清算人が債権者を個別に訪問してこれらを説明することもできます。実際に、清算人は、債権者を個別に訪問することで清算事務報告集会の開催をしていないことのほうが多いと思います。
特別清算の目的は、会社の資産と負債をゼロにすることですが、債務超過会社の場合、すべての会社の資産を換金しても負債を完済することはできません。
そのため、債権者に債務の免除や条件の変更に同意してもらう必要があります。このとき債権者の同意を得る方法は、先にも説明したように協定型と和解型のふたつがあります。協定案決議集会は、債権の権利変更を内容とする協定案を決議するための集会で、協定型の場合にのみ開催されます。協定型と和解型を整理してみると次のとおりです。
【協定型】
協定型は清算会社が申し出た協定案を債権者集会における多数決を経て清算を進めるというものです。この協定は、原則としてすべての債権者に対して平等でなければなりません。
具体的に負債総額3億円の会社で説明しましょう。
この会社の資産をすべて換金したところ4000万円残ったとします。その中から、弁護士費用に500万円、税金と未払賃金などの労働債権に500万円、計1000万円を先に支払います。残りの3000万円が弁済金となりますので、負債総額に対し10%が弁済率ということになります。このとき、債権者であるA社とB社にそれぞれ2億円と1億円の負債があったとすれば、それぞれ2対1の割合で按分され、2000万円と1000万円を弁済することになります。
弁済率については、弁済で不利益を受ける債権者が同意すれば、少額の債権者について有利な取扱いをしてもかまいません。衡平を害しないのであれば、必ずしも平等な扱いをしなくてもいいのです。
【和解型】
和解型は清算会社が各債権者と個別に和解を進めるもので、債権者ごとに弁済条件を変えることもできます。協定型のように協定案決議のための債権者集会を開催する必要はありませんが、個別に和解を得るのが難しいこともあります。
こちらも具体的に、負債総額1億円の会社の場合で説明します。
この会社の債権者が主要取引先1社だけで、会社の資産をすべて換金して必要経費を先に支払った残金が1000万円だとします。債権者が、この1000万円の支払をもって、残りの9000万円の債務を免除すると承諾した場合、その内容で和解をします。なお、この和解には裁判所の許可が必要です。
この和解に基づいて会社が1000万円を弁済すると、9000万円の債務免除を受けて負債がゼロとなることから、清算事務が結了したとして、清算人が裁判所に特別清算終結の申立てをし、終結決定を経て、特別清算は終結します。
ちなみに、筆者の案件では、親会社が唯一の債権者となって子会社について特別清算をとった場合には和解型を採用し、複数の金融機関が債権者となっている場合には多数決で済む協定型を採用しています。