GOOD部門を見つけたら「単体で黒字になるか」を分析
前回に引き続き、事業譲渡の進め方について説明します。経営者と打ち合わせながらヒアリングシートに会社の情報を記入したあとは、事業の中身についてのヒアリングです。
メーカーか卸売か小売業か、同じサービス業でも飲食と美容院・エステサロンでは業態も異なります。それぞれに応じてGOOD部門を探します。事業のダイヤの原石はどこにあるのか。いい人材なのか、設備なのか、それともいい取引先があるのか。すべてダメだとしても、許認可や免許があればGOODになる場合があります。
逆に、何もなくても、経験を積んだ人や高度な技術があれば、それだけでも可能性は広がります。全部パーフェクトという会社はなかなかありませんが、その中でひとつでもふたつでも輝くものがあれば、十分売れる価値はあります。
そうしてGOOD部分を見つけたら、その事業だけを切り出したときに単体で収支が黒字になるかどうかを分析するのです。会社として赤字でも、事業単体で黒字となれば、事業譲渡を考えていきます。
数字が悪くても「誠実な経営者」にはチャンスあり
会社を分析する一方で、私たちは、経営者との話し合いを進めていきます。
その中でもっとも注視するのは、経営者の「誠実さ」です。経営者の資質や姿勢は会社経営にはっきりと映し出されます。経営者がいい加減な会社はモノづくりやサービスもいい加減で経理もいい加減ですから、一見それほど数字や会社の状態が悪くなくても、要注意と感じてしまいます。事業譲渡や特別清算をしている過程で、問題が生じることも多いからです。
一方、多少決算書の数字が悪くても、誠実な経営者の場合には十分チャンスがあるというのが、筆者の経験の印象です。さらに私たちが、経営者との話し合いの中で必ず聞く項目のひとつに、「なぜ会社を売りたいのか」という質問があります。債務超過会社の場合、事業譲渡して事業承継を図るとともに、その代金を返済に充てたいという理由が上げられます。
これに対し、資産超過なのに事業譲渡を考えている経営者の場合「子どもがいないから」「従業員の中に経営者になる気概のある者がいない」といった理由が掲げられています。子どもがいても、いわゆる「3K」と呼ばれるようなキツい、危険、汚い、仕事だったりすると、親は「子どもにはこんな仕事はさせたくない」ということで承継させずに廃業を考えるケースもあります。
いずれにしても、こうした経営者と専門スタッフのコミュニケーションの中から経営者の方の人となりを知り、事業の内容を分析しながら、事業譲渡+特別清算+経営者保証ガイドラインという工程が可能かどうかを探っていくことになります。