社員の教育には投資しているのに「思うように育たない」のはなぜでしょうか? 本連載では、「自ら考えて、育っていく社員」を作るためのポイントを紹介していきます。

体系的・論理的な理解が不可欠な「教育」の世界

人材教育のために投資をしているのに社員が育たないという悩みを解決するのが、IDの考え方です。

 

IDの説明の前に、少し私の自己紹介をさせてください。私は、地元の大学の薬学部を卒業し、製薬会社の営業職として社会人生活をスタートさせました。

 

当時はまだ営業職の女性が少なかったこともあり、入社2年目から新入社員の研修時に女性の営業職の先輩として話したり、研修のお手伝いをしたりしていました。入社6年目になると、営業から本社の人材教育の部門に異動になります。人材教育の部門といってもそれだけでなく、コールセンター的な業務や、パンフレット作成などの業務も併せて行い、さまざまな経験をすることができました。

 

そろそろ次のステップに進もうと思い、一番面白いと思っていた人材教育を主とする仕事を選んで転職をします。そこでは、異業種の営業をしていた人を採用して、製品の知識やセールススキルを教え込んでいました(今、考えれば、完全にペダゴジーの学校教育の発想での研修でしたが)。

 

研修スタッフとして務めた後、経験を重ねてマネジャー職に昇進しました。

 

すると、一トレーナーとしてではなく、部下と一緒にカリキュラムを考えたり、営業の教育体制・カリキュラムなど自社の優位性について説明したりする機会が増えてきました。それまでの経験値や感覚に頼るのではなく、もっと体系立てて、論理的に教育を理解し、説明できるようにならないといけないと考えるようになりました。

退職して本格的に学んだ「IDを使った教育」

そんな時、IDを知るきっかけがありました。欧米ではIDを使って教育を考えていると知り、「こういうことを勉強すれば良いのか!」とビビッときて、IDの第一人者である熊本大学大学院社会文化科学研究科・教授システム学専攻長の鈴木克明教授の研究室のドアを叩きます。直感的に「1回しっかりと勉強をした方が良い。中途半端でなく、ちゃんと学びたい」と考え、退職して大学院に通うことにしました。

 

といっても、熊本大学は、eラーニングで修士課程を修了できる社会人大学院ですので、本当は会社を退職する必要はありませんでしたが、私なりの「けじめ」でした。のちに、鈴木克明教授に「会社を辞めなくても良かったのに……」と驚かれてしまいましたが……。

 

結果的に今の会社を起業することにつながり、学びも実践も深められたので、あの時の選択は間違っていなかったと確信しております。

魔法の人材教育

魔法の人材教育

森田 晃子

幻冬舎メディアコンサルティング

社員が思うように育たない――そう嘆く人材教育担当者の声をしばしば耳にします。たとえば、多くの企業では階層別研修などの「企業内研修」を実施していますが、これらの研修は厳密な効果測定が難しいうえに、受講者からは「知…

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