理論を使うために研修をするわけではない、と心得る
IDの概要を理解し、方略を探す手段としてさまざまな理論モデルがあります。理論モデルは、あくまでも研修設計や教材作成のためのミクロデザインの際に利用するものであり、理論を使うために研修をするのではないことへの注意が必要です。
ここでは、
① ARCS動機づけモデル
② メリルのID第一原理
③ 経験学習モデル
という3種類の理論モデルについて詳しく紹介します。
①ARCS動機づけモデル
ARCS動機づけモデルは、フロリダ州立大学大学院教授のジョン・M・ケラーが提唱する対象者の意欲を高めるための方法です。高い学習意欲を引き出し、継続的に学ばせるためのアプローチを研究した結果、以下の4つのシンプルなやり方で学習意欲が飛躍的に高まることを実証したモデルです。
Attention:注意「おもしろそうだな」
↓
Relevance:関連性「やりがいがありそうだな」
↓
Confidence:自信「やればできそうだな」
↓
Satisfaction:満足感「やってよかったな」
出典: J・M・ケラー著 鈴木克明監訳『学習意欲をデザインする ARCSモデルによるインストラクショナルデザイン』(北大路書房)
過度なチェックはモチベーションの低下に・・・
「やる気がない対象者だ」とあきらめるのではなく、このARCSの4つの側面から考えて、学習意欲を高められるように工夫をして、より魅力的な研修にしていってください。
例えば、進行スライドを作り終えた時に受講者の気持ちになって、A・R・C・Sの観点で過不足がないかチェックするのは効果的なやり方でしょう。しかし、過ぎたるは及ばざるがごとしで、作戦の盛り込みすぎはかえってモチベーションダウンにつながるので要注意です。
この話は次回に続きます。