日本各地の自治体で実施されている「イベント民泊」の概要

厚生労働省が提示した認定の条件とは？

前回の続きです。

③イベント民泊は、前述したようにイベント時の宿不足を補うことを目的とした民泊の仕組みです。厚生労働省は、以下のような3つの要素をイベント民泊が認められるための条件として求めています。

⑴ 年1回（2～3日程度）のイベント開催時であって

⑵ 宿泊施設の不足が見込まれることにより

⑶ 開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの

このうち、⑴については特別な注意を要します。というのは、厚生労働省はこの要素に関連して「同じ施設内で宿泊者の入れ替わりがないこと」も要求しているからです。

具体的には、たとえばイベント民泊実施期間が3日間とされた場合、自宅に、1日目から2日目午前までは宿泊者Ａを宿泊させ、2日目午後から3日目までは宿泊者Ｂを宿泊させる場合は、「宿泊者の入れ替わり」があるため、⑴の条件を満たさないことになるのです。他方、この例で、自宅に、同時に、複数組、複数人を宿泊させる場合は、「宿泊者の入れ替わり」がないため、イベント民泊として実施することが可能になります。

また、同一自治体において、1年の間に複数の異なるイベントがあった場合、同一施設において、1年の間に複数回イベント民泊を実施することも、⑴の条件を満たさず許されないと考えられています。

たとえば、5月と9月にイベントが開催された場合、5月に自宅をイベント民泊の施設として提供した人は、9月のイベント開催時に自宅を再びイベント民泊に提供することはできません（なお、この例で、5月のイベント開催時にイベント民泊の登録を行ったものの、宿泊者の受け入れ実績がなかった場合には、9月のイベント開催時に自宅を提供することは可能とされています）。

「宿泊者の入れ替わりがある場合」あるいは同一施設について、年に2回以上、宿泊者を受け入れる場合には、別途、旅館業法に基づく営業許可が必要となるのでくれぐれも気を付けてください。

試行錯誤を繰り返しながら広がるイベント民泊の可能性

イベント民泊はすでに各地の自治体で様々な形で実施されており、当社もこれまで多数のイベントをサポートしてきました。2016年上半期に関わった例としては、以下のようなイベントがあげられます。

●東北風土マラソン（2016年4月23日～4月24日）

●相馬野馬追（2016年7月23日～7月25日）

●徳島阿波おどり（2016年8月12日～8月15日）

●五所川原立佞武多（2016年8月4日～8月8日）

●仙台七夕まつり（2016年8月6日～8日）

仙台七夕まつりでは、一人暮らしをされているサラリーマンの方が、お住まいのアパートの洋間を宿泊場所として提供しています。当社の仲介サイト上では、「テレビと漫画等が多少ありますが、それ以外これといって特に何もないので、寝る場所さえあれば良い人向けです」と物件について案内されていますが、イベント民泊はホテル・旅館を確保できず困っている人たちにその代替施設を提供することがそもそもの目的なので、寝泊まりできる場所があれば必要十分といえるでしょう。

なお、2015年に、福岡県福岡市で開かれた2組の人気アーティストのライブツアーの際にも、イベント民泊が行われました。コンサートにイベント民泊の利用が可能か否かについてはやや不明瞭なところがあったので、この福岡市におけるイベント民泊の実施は、厚生労働省の見解に基づく〝試験的取り組み〟として試みられました。今後もこのように試行錯誤を繰り返しながら、イベント民泊の可能性は少しずつ押し広げられていくことになると思います。