前回は、日本各地の自治体で実施されている「イベント民泊」の概要について紹介しました。今回は、未だ改善余地が残る公認民泊の中から、「簡易宿所」の問題点について見ていきます。

公認民泊にも改善すべき問題点は多い

これまでの記事で、合法的に民泊を行う手段として、①簡易宿所、②特区民泊、③イベント民泊、それぞれの仕組みや実例等について紹介してきました。実例として取り上げたホスト・ゲストの方々のコメントからは、これらの公認民泊の仕組みの中で民泊サービスを行うことが「泊まる側」の大きな満足感につながっているのはもちろん、「泊める側」にも大きなやりがいや喜びをもたらしている様子が伝わったのではないでしょうか。


”ヤミ民泊”の場合、ホストが法に反している事実を認識しているのであれば、「違法なことをしている」という〝罪悪感〟を心のどこかで感じずにはいられないはずです。しかし、公認民泊であれば、そのようなやましい思いを抱くことは全くありません。ビジネス目的であれ、国際交流が目的であれ、民泊のホストを務めることによって得られる喜びを心の底から味わうことができるのです。


もっとも他方で、現状の公認民泊が、全く文句のつけるところがない百点満点の制度かと問われれば、「イエス」とは答えられないところもあります。すなわち、簡易宿所も特区民泊も、イベント民泊も、ホスト・ゲスト双方の利用者、とりわけホスト側の視点から見ると改善すべき問題がないとはいえません。

合計床面積の規制は緩和されたが…

まず、①簡易宿所については、合計床面積に関する規制が緩和されたとはいえ、共同トイレ、共同洗面所に関する基準や、多くの自治体が玄関帳場の設置を義務付けていることなど、許可を得るために必要な条件が厳格すぎるように思われます。また、用途規制の緩和も検討されるべきでしょう。管理者、仲介事業者(プラットフォーマー)等が、騒音等のトラブルが起こらないよう責任を持って管理を行うことを条件に住居専用地域での運営も認められることが望ましいと思われます。

 

あわせて、消防法の厳しい規制についても検討する余地があります。構造が単純な既存住宅物件では、対応が困難な条件が多いはずです。

本連載は、2016年12月16日刊行の書籍『民泊ビジネスのリアル』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法令改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

民泊ビジネスのリアル

民泊ビジネスのリアル

三口 聡之介

幻冬舎メディアコンサルティング

世界中で大ブームとなっている「民泊」。日本でも約4万6000件の物件が民泊用のマッチングサイトに登録されています。民泊が広まっている背景にはシェアリング・エコノミーの流行、人口減少による遊休不動産の増加、訪日旅…

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