「南京虫」とも呼ばれるトコジラミ
最近は、「トコジラミ」の防除も、宿泊業界では大きな課題となっています。
トコジラミとは、体長5~7ミリほどのカメムシの仲間で「南京虫」ともよばれています。夜行性で、その幼虫及び成虫は吸血を行います。血を吸われると強いかゆみを感じますが、1回目の吸血では何も起こらず、2回目以降にアレルギー反応が出ることが多々あります。
トコジラミは、戦前までは日本でもごく一般的に身近なところにいた害虫でしたが、戦後に駆除が進み、ほとんど見かけない状態となりました。しかし、近年、海外から持ち込まれるようになり、ホテルや旅館等を中心にその被害が拡大しているところなのです。
多大な手間と費用をかけて行う駆除・・・民泊はどうする?
有害生物に関する調査研究などを行っている公益社団法人の日本ペストコントロール協会によれば、室内にすみ着いたトコジラミを退治するためには以下のような手段を取ることが必要となります。
①人と接するマットレスに発生したものは、吸い取り除去、蒸気による加熱で殺虫。
ベッド裏の木枠、ヘッドボード、ベッド周りの室内、家具の裏、畳等は殺虫剤で処理。
②布団、衣類、本、カーテン、日用品等のトコジラミのいそうなものを1カ所に集め、加熱により一括殺虫(加熱乾燥車、洗濯用ドライヤー、断熱袋に入れて熱風を送り55度で2~3時間加熱)。
③3~4日後、調査をし、目視とトラップによる捕獲がなければ終了。
トコジラミの駆除等には多額のコストを要します。そのため、宿泊業者向けに駆除費用等の負担をカバーすることを目的とした保険の「トコジラミ駆除費用特約」なども販売されています。
このように、ホテルや旅館では、基本的な衛生管理はもちろん、レジオネラ症やトコジラミなどへの対策に関しても、多大な手間と費用をかけて念入りに行っているわけです。
〝ヤミ民泊〟に利用されているマンションや一軒家で、同様の対策が行われているところは、おそらくほとんどないでしょう。ホテルや旅館と比較した場合に、〝ヤミ民泊〟の衛生管理に対して不安の声が上がるのは、しごくもっともな話といえるかもしれません。
[図表]東京都におけるトコジラミの相談件数