前回は、スターバックスやサウスウエスト航空に見る事業モデル例を紹介しました。今回は、トヨタ自動車やアスクルのケースで「事業モデル」を見ていきます。

顧客の「生涯」にわたって商機にする戦略モデル

前回の続きです。

 

顧客ライフサイクルマネジメントモデルは、顧客の成長に伴うニーズの変化に対応し、商品ラインナップを揃え、顧客の生涯にわたってビジネスを行う戦略モデルです。トヨタ自動車などの日本の大手自動車会社、ベネッセコーポレーションなどで採用されています。

 

たとえば自動車会社の事業では、顧客のライフサイクルとして「新入社員→中堅社員→エグゼクティブ」の流れが想定されています。

 

まず、新入社員については車に乗り始めたばかりであり、その多くが独身であることから、エントリー製品としてコンパクトカーを提示します。

 

次に、中堅社員については家族持ちが多いと想定されることからファミリーカーへと誘導していきます。

 

そして、エグゼクティブについては、金銭的余裕があると考えられるので高級車へとナビゲートしていきます。

 

顧客ライフサイクルマネジメントモデルのビジネスマップを説明すると、バリューチェーンのブロックに関しては、KPが資材、部品メーカー、KAがライフステージに応じた製品開発、KRが従業員、製品、VPが顧客のライフステージに応じた最適な製品を提供すること、CRが販売店、電話、WEB、CHが販売会社(ディーラー)、CSが新規若年ユーザーを生涯にわたってターゲットにすることになります。

 

一方、収益モデルのブロックに関しては、CSがR&D(研究開発)、製造コスト、マーケティング費用、RSが製品の売上になります。

 

[図表1]顧客ライフサイクルマネジメントモデル

 

卸・小売と顧客が一体化した「顧客の購買代理モデル」

顧客の購買代理モデルは、卸・小売が顧客サイドに立って行動することにより、顧客との良好な関係を維持するビジネスモデルです。たとえば、オフィス用品等の小売業者であるアスクル、金型用部品商社のミスミなどがこのビジネスモデルを採用しています。

 

従来の販売モデルでは、卸・小売がメーカーから製品を仕入れて顧客と販売するという形が一般的でした。つまり卸・小売は顧客と対峙する存在であったわけです。それに対して顧客の購買代理モデルでは、卸・小売が複数の商品を顧客のために比較検討したり、複数の顧客のニーズをまとめて集中購買を行ったりするなど、顧客の利益を重視して購買サービスを提供します。つまり、卸・小売と顧客は一体化しているわけです。メーカーによる卸・小売の系列化・支配化の傾向が強まる中で顧客の購買代理モデルはそれに対抗できる有力な選択肢とみなされています。

 

顧客の購買代理モデルのビジネスマップを説明すると、バリューチェーンのブロックに関しては、KPが各商品・資材メーカー、KAが顧客の立場で商品・資材を仕入れること、KRが従業員、商品・資材、VPが顧客の立場で顧客の利益を第一優先に商品・資材の購買代行を行うこと、CRがF2F(対面)、電話、WEB、CHが直販、CSが多品種・少量の商品・資材のとりまとめおよびベストプライスでの購入を希望する顧客層になります。

 

一方、収益モデルのブロックに関しては、CSが商品・資材の原価、販管費、RSが商品・資材の売上になります。

 

[図表2]顧客の購買代理モデル

本連載は、2017年4月27日刊行の書籍『超図解! 新規事業立ち上げ入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

超図解! 新規事業立ち上げ入門

超図解! 新規事業立ち上げ入門

木下 雄介

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の企業は目下巨大なパラダイムシフトの波に直面しています。 経営環境の変化がめまぐるしい中、企業が生き残るためにはビジネスモデルを再構築し、新たな収益の源泉として新規事業に取り組むことが不可欠です。 新規事業…

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