共食いをおそれず集中出店…「地域ドミナントモデル」
前回の続きです。
①地域ドミナントモデルは、特定地域に高密度で出店し、競合他社を排除する戦略モデルです。たとえば、セブン─イレブン、スターバックスなどがこのビジネスモデルを採用しています。下記の図1で示したように、本来は店舗間を広く取ったほうが顧客の共食いが避けられ、商圏を広く取れるため、店舗効率は高くなると考えられます。
しかし、地域ドミナントモデルでは、共食いが生じることをおそれず、店舗を密に配置することによって地域を独占することに力を注ぎます。その結果、競合が存在しない空間を作り出すことができれば、「地域内の顧客を総取りできる」「価格競争がなくなるので安定した需要を予測できる」という効果を期待できます。また、店舗密度が高いため、配送、広告などを効率化することも可能となります。
地域ドミナントモデルのビジネスマップを説明すると、バリューチェーンのブロックに関しては、KP(主な提携先)が食品、日用品メーカー、KA(主な業務活動)がPB商品の開発、店舗管理、KR(主な経営資源)がブランド、PB商品、加盟店、VP(提供価値)が高品質のPB商品を中心に「近くて便利」を提供すること、CR(顧客との関係)が店舗、CH(チャネル)が加盟店、CS(顧客とのセグメント)が各特定地域の消費者(特定地域に高密度で出店)になります。
一方、収益モデルのブロックに関しては、CS(コスト構造)が商品管理費用、店舗運営指導費用等、RS(収入構造)がロイヤリティ収入になります。
[図表1]地域ドミナントモデル
需要が高い部分のみ狙う「クリームスキミングモデル」
②クリームスキミングモデルは、高い需要が見込める市場セグメントにのみ集中し、低価格による差別化を図るビジネスモデルです。「クリームスキミング」とは牛乳からクリームをすくい取るという意味であり、つまりは「いいとこ取り」を狙うわけです。たとえば、サウスウエスト航空などのLCCや、イギリスの通信会社であるコルトなどがこのビジネスモデルを活用しています。
下記図表2の需要曲線のうち、クリームスキミングモデルがターゲットとするのは山の部分(高需要セグメント)になります。市場の中で需要が大きな部分で事業を展開することにより設備稼働率が上がり、業務の効率化も進みます。その結果として商品・サービスを安価で提供することが可能となり、さらに稼働率が上昇していくという好循環がもたらされることになります。なお、クリームスキミングモデルが機能するためには、地域や顧客を限定せずにユニバーサルに事業を展開している競合が存在することが前提となります。
クリームスキミングモデルのビジネスマップ(LCCのケース)を説明すると、バリューチェーンのブロックに関しては、KPが航空機メーカー等、KAが合理化、最適サービスの提供、KRが従業員、航空機、VPが必要十分なサービスを低価格で提供すること、CRがF2F(対面)、電話、WEB、CHが自社、CSが高い需要が見込める特定市場セグメントになります。一方、収益モデルのブロックに関しては、CSが航空機リース料、空港使用料、販管費等、RSがサービス利用料になります。
[図表2]クリームスキミングモデル