「契約から数ヶ月は無料でサービス提供」という集客法
前回の続きです。
⑨フリーモデルは、一部の価値提供を無償化して集客力を高め、周辺の有償部分で儲けるビジネスモデルです。ソフトバンクなどの携帯電話会社が様々なサービスを契約から数ヶ月間、無料で提供し集客しているのはフリーモデルの具体例といえます。
また、国内外のIT企業ではこのビジネスモデルの一種である「フリーミアム」が盛んに活用されています。フリーミアム(Freemium)は、無料を意味する「フリー(Free)」と割増しを意味する「プレミアム(Premium)」を組み合わせた造語であり、製品・サービスの基本機能は無料で提供し、より高度な機能や特別な機能はオプション機能として有償で提供するというものです。
Dropboxが、一定の容量まではストレージサービスを無料で提供し、それを上回る容量については有償としているのはフリーミアムの戦略に基づいています。また、DeNAがオンラインゲーム「モバゲー」を無料で提供し、その中で使う武器などのツールについては有償で販売しているのも同様の戦略といえます。
DeNAを例にフリーモデルのビジネスマップを説明すると、バリューチェーンのブロックに関しては、KPが開発協力会社、KAがアプリ開発、KRがアプリ製品、VPが魅力的なアプリを基本無償提供(オプション機能は有償)すること、CRがWEB、アプリ、CHがインターネット、CSがアプリ利用者になります。
一方、収益モデルのブロックに関しては、CSがアプリの開発費用等、RSが有償サービスの売上になります。
[図表1]フリーモデル
自社の優れた機能の一部を切り出し、他社に外販
⑩機能外販モデルは、自社の優れた機能の一部を切り出して他社に外販するビジネスモデルです。ドイツの航空会社ルフトハンザが飛行機の整備を他社から大規模に受託しているのがその実例としてあげられます。
また、アマゾンによって提供されているAWS(アマゾンウェブサービス、AmazonWebServices)も、機能外販モデルの成功例といえます。AWSでは、アマゾンが本業で培ったシステム運用ノウハウやシステムリソースなどが外販されており、その結果、同社には大きな利益がもたらされています。
このように近時、機能外販の動きが活発化している背景の1つとしては、通信の発達やコストダウンによって、ビジネスの各機能が物理的に近接していなくてもスムーズに連動できるようになったことなどが指摘されています。
アマゾンのAWSを例に機能外販モデルのビジネスマップを説明すると、バリューチェーンのブロックに関しては、KPがAWS上で稼働するアプリ提供会社、KAがシステム運用、KRがAWSシステム、VPがハイレベルのシステムインフラを低価格で提供すること、CRがWEB、電話、F2F、CHが直販と販売パートナー、CSがAWSシステム利用ユーザーになります。
一方、収益モデルのブロックに関しては、CSがシステム運用管理費用等、RSがサブスクリプション方式(利用料金)になります。
[図表2]機能外販モデル