前回は、企業の収益モデル策定に不可欠な「利益の公式」を解説しました。今回は、ビジネスの流れを可視化する、「ビジネスモデルキャンバス」の記入法を見ていきます。

まずは自社の「ビジネスモデルの全体像」を掴む

前回の続きです。

 

一方、ビジネスモデルキャンパス全体図の下部には、収益モデルを配置します。左側にコスト構造、右側に収入構造のパートを位置させ、その対比で収益モデルを表現します。

 

まず、コスト構造は「CS (Cost Structure)」で示されます。事業でかかる費用を列挙するブロックです。略称がバリューチェーンの要素である「CS(Customer Segments)」と同じなので、混同しないように気をつけましょう。

 

一方、収入構造は「RS(Revenue Structure)」で示されます。具体的には顧客セグメントから生み出されるお金の流れ(課金方法など)を表現します。

 

以上のような9つのブロックを全て埋め終えることで、ビジネスモデルキャンバスの全体は完成します。作成し終えたら、全体の流れを確認してみましょう。右側を顧客と収入に、左側を自社とコストにかかわる分野として把握することによって、全体図をより理解しやすくなるはずです。

 

また、ビジネスモデルキャンバスは1回作ればそれで終わりというものではありません。できあがったファーストキャンバス(最初のビジネスモデルキャンバス)を土台に、顧客分析などを反映させて、よりブラッシュアップしたセカンドキャンバスを作成する……というような形で、修正・改善を繰り返して、完成度を高めていきます。

 

逆にいえば、はじめから「完全なものを作ろう」と気負う必要はありません。まずはドラフトを作るつもりで取り組むとよいでしょう。また、明確になっていない要素については検討事項を記載するだけでも構いません。

 

[図表1]ビジネスモデルキャンバス/収益モデル

10種類のビジネスモデル

企業の長い歴史の中で、これまで様々なビジネスモデルが生み出され活用されてきました。経営コンサルタントの今枝昌宏氏は、著書である『ビジネスモデルの教科書』(東洋経済新報社)の中で主なビジネスモデルを類型化しわかりやすく解説しています。ここからは、同著を参考にしながら、次の10のビジネスモデルをビジネスモデルキャンバスの形で紹介していきましょう。

 

①地域ドミナントモデル

②クリームスキミングモデル

③顧客ライフサイクルマネジメントモデル

④顧客の購買代理モデル

⑤プラットフォームモデル

⑥アンバンドリングモデル

⑦ブルーオーシャンモデル

⑧レーザーブレードモデル

⑨フリーモデル

⑩機能外販モデル

 

下記にあげたような形式で次回以降、①から⑩のビジネスモデルを具体的に解説していきます。新規事業を考えるうえで、これら10タイプのビジネスモデルの代表例を学ぶことは大変有益です。たとえば、自社で手がけようとしている新規事業が、⑦ブルーオーシャンモデルにあてはまるのであれば、該当記事を参考にしながら、自社のケースに適したビジネスモデルキャンバスを作成することを試みてみるとよいでしょう。

 

[図表2]ビジネスモデルキャンバスのフォーマット例

本連載は、2017年4月27日刊行の書籍『超図解! 新規事業立ち上げ入門』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

超図解! 新規事業立ち上げ入門

超図解! 新規事業立ち上げ入門

木下 雄介

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の企業は目下巨大なパラダイムシフトの波に直面しています。 経営環境の変化がめまぐるしい中、企業が生き残るためにはビジネスモデルを再構築し、新たな収益の源泉として新規事業に取り組むことが不可欠です。 新規事業…

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