前回は、会社存続に最低限必要な売上高を算出する方法について紹介しました。今回は、会社の再生のために不可欠な「出ていくお金」の減らし方について見ていきます。

「原価」「一般経費」を見直してみる

前回の続きです。

 

このようにして会社の現状の数値を把握することができれば、次は「出ていくお金」を減らすことを考えなければなりません。出ていくお金を減らして、入ってくるお金より少なくできれば、当然ながらその差額が利益になります。出ていくお金が減っていけばその分、利益は増えることになるはずです。

 

出ていくお金を減らすには、次のようなことが考えられます。

 

①原価を減らす

 

仕入れ値を削減すれば製品ひとつ当たりの利益を増やすことが可能になります。特に、長く経営している企業の場合、長年決まった仕入れ先から仕入れを行っているということもままあります。ほかに安い仕入れ先がないか、見積もりをとってみるとよいでしょう。

 

とはいえ、長年のつきあいなどもありますから、仕入れ先に大幅な値引きを要求することは避けたほうが賢明です。たとえば「仕入れは他社よりも高いが、納品の融通が利く」など、価格だけでは評価できない部分もあるはずです。そうした多角的な面から評価し、「適正かどうか」を常に見る癖をつけましょう。

 

②一般経費を減らす

 

一般経費とは、会社の光熱費、水道費、電気代のことです。通常毎月ほとんど変動することはなく、必要な経費のためあまり見直すことはない科目です。

 

しかし、こうした光熱費は努力しだいで安く抑えることができるので、今一度見直してもよいでしょう。

 

たとえば、まったく使用していない設備の電源が入りっぱなしになっていないか、ということはもちろんですが、基本料金が高かったり、実際の使用量に合っていない場合もあります。

 

最近は、電力自由化によりさまざまな省エネ対応のプランが出ています。現在の料金を見直し、最適なプランを検討し直してみることをおすすめします。

経営者にとって「お金の公私混同」は禁忌

「出ていくお金」を減らす方法の3つ目として注意したいのが、経費の扱いについてです。

 

2016年、当時の東京都知事が公用車で別荘に行ったり、家族旅行のホテル宿泊費を政治活動費としていたことが問題となり、辞任に追いこまれたことは記憶に新しいところです。

 

公費(税金)を私用で使うのは言語道断ですが、中小企業の経営者の中には、これと似たことをしている人も少なくありません。家族での食事代や、友人との酒席の会計も経費、レジャーの途中に給油したガソリン代も経費……このようにして領収書をかき集めるだけ集め、すべて会社の経費として計上しているのです。

 

経営者の経費の捉え方として、一番改めなければならないことは、こうした公私混同の姿勢にほかなりません。

 

これは、れっきとした脱税行為です。額が少ないからバレるはずがないという軽い考えで行っているとすれば大きな問題で、こうした「ルーズな金銭感覚」や「モラルの低さ」が染みついているようでは、会社を立て直すことは到底不可能と言えます。

 

なぜなら会社を再生させるにはどうしても他人の助力が必要ですが、ルーズでモラルが低い姿勢のままでは、当然、周りから信頼を得られないからです。つまりあなたを助けてくれる人を失うということです。

 

多くの経営者が陥りがちなささいな例として、携帯電話の料金を経費扱いとして処理しているということがあげられます。しかし、携帯電話の使用にも、公私混同の小さな芽が顔をのぞかせているのです。

 

たとえば私のお客様の中にも、LINEのスタンプの購入費やゲーム代金を通信費として処理してしまっている人が多いのですが、徹底している経営者は、こうしたスタンプの購入費のような少額すらも経費にしないという姿勢を貫いているのです。仕事に使う携帯は、私用では決して使わない。それくらい会社と個人をしっかり切り分ける姿勢が、経営者には必要なのです。

本連載は、2017年3月23日刊行の書籍『「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法

「万年自転車操業」の会社を「万年安定経営」に変える方法

小林 優一

幻冬舎メディアコンサルティング

リーマンショック、アベノミクスを経た現在でも、中小企業は生き残りをかけた厳しい時代を迎えています。このまま手をこまねいていれば倒産・廃業を回避することはできません。しかし、多くの零細企業経営者・個人事業主は、何…

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