前回は、商圏分析に社会地図を活用した「宅配ピザサービス」の事例 を取り上げました。今回は、比較調査から浮かび上がる、地域による需要の特性について見ていきます。

都心を代表するピザブランド3社を比較調査

前回の続きです。

 

このプロジェクトではコンビニエスストア開発のベテランのK氏が調査の指揮を執った。中でも競合店調査は重要だ。都心を代表するピザブランド3社の配達エリアを比較調査する、ベンチマーキングを実施した。ベンチマーク調査とは同一基準で企業の各種KPIを比較する調査で、この場合は商圏規模と質、売り上げ規模を宅配バイクの数から評価する手法で探った。

 

ベンチマークとしたのは、東京地区で代表的な宅配ピザのブランド、Aブランド、Bブランド、Cブランドの3ブランドをピックアップした。それぞれのブランドの店舗ごとにバイク台数を3段階で評価し、宅配エリアの居住者タイプと比較した。

 

その結果「都市部の単身・カップルの多くいる地区」で人気が高いのがAブランド、「ファミリー世帯」の多く住む地区で人気なのがCブランド、その中間の地域で支持されるBブランドという結果が明らかになった。そして、それぞれのブランドごとにABCの3段階に評価した結果を重ねてみると、都内でも江東区など東の地区に集中的にランクの高い、つまりピザの売り上げのよい商圏が集まっていることが明らかになった。

地域によって異なる各ブランドの需要

このプロジェクトでは、大阪の顧客データの住所から大字町丁目単位に居住者タイプの54類似性を測定し、その結果を東京の居住エリアに投影することで、大阪の顧客が住んでいる地区と似ている地区を抽出するホットスポット分析も実施された。その結果、大阪の当該ブランドの宅配ピザ利用者と類似した人が多く住むエリアは環状7号線の外側に色濃く現れた。これは当初のターゲットエリアのイメージと異なるものとなった。

 

そこで検証も兼ね、東京進出の第一弾として大田区の蒲田エリアに出店を決定した。このエリアは環境7号線の内側と外側の境界エリアに属する。もし環状7号線より内側の人たちの反応がよければ当初の仮説は正しく、環状7号線の外側の人たちが多く反応したらホットスポット分析の結果が正しかったこととなる。

 

出店してから3か月、ある程度売り上げ実績が蓄積されたところで、蒲田店の顧客データだけを使って再度ホットスポット分析を実施した。結果は環状7号線の外側に沿ってリング状にこの宅配ピザブランドの需要の高いエリアが抽出された。

 

同じ宅配ピザでもそのブランドによって地域的な需要が異なる。大阪の宅配ピザの需要のあるエリアは当初想定していた「都市部の若い単身・二人世帯やオフィスの多い地区」ではなく「就学児童のいる価格に敏感なファミリー層が多いエリア」となった。

 

このエリアは当該宅配ピザブランドが大阪地区で最も多く出店しているエリアの居住者像と一致する。ブランドと商圏居住者との相性、実際の需要はブランドごとに異なり、当初コンビニエンスストアから想起された「消費者」イメージとは異なっていた。

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

酒井 嘉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

「ところ変われば、(売れる)品も変わる」──。現代において「流行」とは、企業がつくり出すものではない。様々な情報へ日常的に触れる消費者に「選ばれて」初めて、流行の商品・サービスとして流通する。ビッグデータ全盛の…

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