前回は、商圏分析でターゲットユーザを読み解くための「3つのステップ」を解説しました。今回は、「店舗・需要発生点」の近接性について見ていきます。

市場規模の予測に便利な「ネットアンケート」

前回の続きです。

 

カードデータがない場合は、来館者アンケートやネットアンケートで商圏の実態を明らかにすることができる。来館者アンケートとネットアンケートを比較した場合、来館者アンケートはコストが高い反面サンプルの偏りが大きい。よく来る人とたまたま来館した人がサンプリングされることが多いからだ。

 

また大型商業施設の場合、どこでアンケートを実施するかで、何のために来館したか、目的が限定される場合が多い。食料品売り場の前でアンケートを実施すれば、日常的に食品を購入しに来る高頻度の来館者をサンプリングすることになる。

 

ネットアンケートの場合は来館頻度、年齢分布、男女比率など比較的自由にサンプル数を割り付けることができるので、市場規模の予測などに便利に利用することができる。アンケート結果も先に見たカード分析と同じように設定した商圏内のジオデモと比較して方向性を探ることができる。

海外ブランドが自由が丘・代官山での出店を目指す理由

立地(近接性と集積)

 

店舗開発担当者が最も注目するのがこのスケールで英語ではロケーション(location)と言われるスケールとなる。

 

特に注目されるのは店舗と需要発生ポイントの近接性だ。需要発生点とは駅、インターチェンジ、オフィスビルや学校などのほか住宅なども含まれる。需要である人間のいる場所、集まる場所、通過する場所が対象となる。そして、それらの需要発生地点の集積状態もポイントとなる。店舗はどんな商業集積地に立地しているか? 大型商業施設の中か、ロードサイドの商業集積地か? あるいは単独で出店しているか? さらにどのような業種や業態が多く集積しているか?

 

スイーツとファッションの街目黒区の自由が丘は集積の力を研究するにはよい事例だ。東急線自由が丘駅を中心に半径1キロメートル圏の年間商品販売額は1200億円(2007年商業統計)だ。12の商店街と1100店舗以上の店が集積しており、目黒区でもっとも稼いでいる街といわれている。自由が丘の商業集積が顕著になるのは戦後で、昭和22年に駅前の整備と自由が丘デパートの開業など高度経済成長とともに商業集積が始まった。70年代に現在の商店街の骨格ができたといわれている。

 

東急東横線沿線の駅周辺の商業集積(1キロメートル圏)ランキングは以下のとおりとなり、自由が丘は第4位にランキングしている。

 

1位 渋谷駅   7900億円/年 2505店舗

2位 横浜駅   6270億円/年 1393店舗

3位 中目黒駅  1410億円/年 1060店舗

4位 自由が丘駅 1210億円/年 1103店舗

 

あらためて一覧表を作成してみると「自由が丘」のイメージは売り上げ規模以上に印象的だということに驚かされる。渋谷駅と比べたら6分の1、横浜駅でも5分の1であるが、そのイメージは実態以上に強烈だ。海外から進出するブランドショップが出店を検討するハイストリートの代表が自由が丘と代官山で、どちらも売り上げ規模は決して大きくはないが個性的な商業集積地である。

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

酒井 嘉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

「ところ変われば、(売れる)品も変わる」──。現代において「流行」とは、企業がつくり出すものではない。様々な情報へ日常的に触れる消費者に「選ばれて」初めて、流行の商品・サービスとして流通する。ビッグデータ全盛の…

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