「そこそこ」の人生を求める傾向が強い若者
なぜ中小企業の生き残りがそんなに難しいかというと、根本に「内需の弱さ」があると言われています。消費者が物を買わない、お金を使わない。だから、物を作っても売れないのです。営業マンの数を増やして営業活動を一生懸命やっても思うように顧客は増えず、会社の売上は低迷するばかり……。今は大企業でさえも「作れば売れる」「ネームバリューがあれば売れる」という時代ではなくなっていますから、中小企業なら尚更です。そして、ほんの数年前まで私自身も「商品やサービスが売れない」ことに頭を悩ませていた経営者の一人でした。
我が国は少子化と高齢化が相まって、今では4人に1人がお年寄りです。2025年には人口の30%が、2055年には40%が高齢者になると言われています。では、若い人たちはどうかというと、「そこそこ」働いて「そこそこ」の人生を求める傾向が強いと言われています。80年代中盤以降に生まれた若者のことを「さとり世代」と呼んだりもしますが、彼らは生まれてからずっと日本経済の停滞を目の当たりにしてきました。そのため、経済が上昇するイメージを持ちにくく、「将来に備えて貯蓄しなければ」という思考になるようです。
また、彼らの大半は生まれたときから身の回りに必要な物がひと通り揃っていて、何もしなくても不便なく生きてこられた人たちでしょう。それで、「努力して何かを手に入れよう」「リスクを冒してでも上のレベルの生活を手に入れたい」という思いが、私たちの世代に比べて弱いのだと思います。
そもそも今は賃金も上がりにくい時代です。この先、真面目に働いても賃金アップはたかが知れており、むしろ、いつリストラされても不思議ではありません。年金などの社会保障も本当にアテにしていいのかは不透明です。
「いいもの」が当たり前で、差別化にならない時代
私も経営者の一人として、この国全体が「簡単には物を買わない・買えない」ムードになっているのをひしひしと感じます。
国民一人ひとりの消費への意欲が低下しているのに加えて、日本の人口そのものが2008年を境に減少に突入していることも、国内市場の縮小に拍車をかけています。このまま人口が減り続けていけば、内需はますます落ち込んでいくでしょう。
今の日本では、どのような商品であっても粗悪商品などはほとんどなく、「いいもの」が普通であり、簡単に手に入ります。ですから、企業は単にいいものを作って売るだけでは生き残っていけません。たくさんある「いいもの」の中で、コストを最小限に抑え付加価値のある「もっといいもの」を作っていけるかが問われています。