セキュリティに優れている暗号化方式「X11」
ダッシュ(DASH)は、バイトコイン(Bytecoin)をフォークして開発された匿名性に優れた暗号通貨です。2014年7月に公開され、当初はダークコイン(Darkcoin)という名称でした。その後、2015年5月にダッシュに改名されました。
ダッシュの大きな特徴は、初期の名称の由来にもなったダークセンド(Darksend)という匿名性の高い取引機能と、その後のダッシュへの改名の由来となった「InstantX」という即座に送金が完了する機能です。また、暗号化方式に「Scrypt」よりも電力消費が少ないうえ、セキュリティに優れていると言われる「X11」を採用しています。
X11とは暗号化方式の1種で、11種類のハッシュ関数(blake、bmw、groestl、jh、keccak、skein、luffa、cubehash、shavite、simd、echo)を組み合わせたもの。X11は、複数のハッシュ関数を利用することでセキュリティに優れているだけでなく、消費電力もScryptより低いと言われています。
また、ダッシュネットワーク内には一般のブロックチェーンを構成するノードに加えて、マスターノード(Masternode)と呼ばれる特別なノードが存在します。このマスターノードに参加するためには、1000ダッシュ以上を保有している必要があります。1000ダッシュを指定のアドレスに送ることでマスターノードネットワークに参加することができます。そしてマスターノードは「ダークセンド」や「InstantX」といった特定サービスの運用を支える対価として、手数料のうち45%を分け合います。
匿名性の高い取引形式「Darksend」も採用
ダークセンドは、ビットコイン用にグレゴリー・マクスウェル(GregoryMaxwell)氏が開発したコインジョイン(CoinJoin)という取引の方法をもとに作られています。
コインジョイン方式とは、一般的な暗号通貨の送金とは異なり、同時期に送金をしようとしている複数ユーザーのコインを一度プールしてから、個別に送金していく取引方式です。
例えば、送金をしたいと思っている2組のペア、AさんとBさん、CさんとDさんがいるとします。AさんはBさんに3ダッシュを、CさんはDさんに1.2ダッシュをそれぞれ送りたいと考えています。
まず送金主であるAさんとCさんのコインは、BさんとDさんのもとに送金される前に一度まとめられ、4.2ダッシュ分の送金プールができます。ここから、送金先であるBさんとDさんにそれぞれ送金が行われます。
ここで、BさんとDさんに送金する際に、送金金額を0.1ダッシュ、1ダッシュ、10ダッシュ、100ダッシュ毎に小分けして送金を行うように調整します。このようにして、匿名性を高めた送金を実現しています。
今回の例では、理解しやすいようにAさんからDさんまでの4人だけでしたが、実際の取引では多くの参加者が存在するので、匿名性をより高めることができます。また、このDarksendの利用にはルールが設けられており、参加者が少なくとも3人以上必要なことや、送金額は1000ダッシュまでといった制限のもとに行われます。
実際にブロックチェーン上に送金記録が残るのは、送金プールから個別の送金先に送金が行われた部分のみで、誰が送金を行ったかまでは追跡することができません。最初の送金主から送金プールへのコインの移動は、ダッシュネットワーク内のマスターノードと呼ばれる特別なノードが行うことで、ブロックチェーン上に記録せずに実行可能です。この時、マスターノード自体も誰がどの金額の送金を行っているかを知ることはできない仕組みになっています。
「InstantX」を用いて行われた取引は、ダッシュネットワークに参加している一般のノードを介するのではなく、ランダムに選ばれたマスターノードによって承認作業が行われます。これにより、最も利用されているビットコインの承認作業の場合の約10分に比べて、格段に速く取引を承認することができます。「InstantX」の承認時間は、約4秒で完了します。これにより、承認時間の問題で難しいと言われていた店頭決済などの応用も可能になると考えられています。
また、不正を引き起こす可能性のある手法であるダブルスペントへの対策も行われており、マスターノード間で確認された取引と重複する一般ノードを介した取引が検知されると、その取引を承認しないように処理されます。
【基本情報】
名称:Dash(旧Darkcoin)
呼び方:ダッシュ(旧ダークコイン)
コード:DASH
開発者/開発組織:DASHFOUNPATLON
暗号化方式:X11
コンセンサスアルゴリズム:ProofofWork
承認目安時間:約2.5分
上限発行量:約2200万