数秒以内に承認が完了、超高速取引が可能に
リップルではビットコインと同様に、ユーザーが持っているIOUを台帳に記録して分散的に管理しています。その台帳は「ブロックチェーン」ではなく、より広義の意味を持つ「分散型台帳(distributedledger)」と呼ばれています。この分散型台帳の整合性の担保は、暗号通貨ネットワークで行われるPoWを担うコンピューターの膨大な計算によるものではなく、一部の承認者(Validator)と呼ばれる役割を担う人によって承認が行われます。承認者のリストをユニーク・ノード・リスト(UNL)と呼び、UNLの80%以上が有効と判定した場合、UNLの承認者たちによって管理されている分散型台帳に記録されます。
この仕組みはPoWに対して、プルーフ・オブ・コンセンサス(Proof of Consensus、PoC)と呼ばれています。PoCによる承認作業では、PoWによるマイニング作業のように電気を消費する必要がなく、数秒以内に承認が完了するため、非常に速い取引が可能になります。
またUNL内の各承認者は、お互いをリップルネットワークの承認者として許可し合うことでネットワークを形成しており、許可されなかった承認者はネットワークから除外されることになります。
現在、UNLの管理はリップル社が行っており、その中にリストされている承認者のほとんどは同社が管理しているサーバーで構成されています。そのため、リップルネットワークの取引の承認は実質的にリップル社が行っていることに等しく、中央集権的なネットワークと捉えられるかもしれません。
リップル社が公開している計画によると、今後段階的に同社で管理しているサーバーを停止していき、他のノードを承認者として加えていくことによって非中央集権的なネットワークにしていくとの方針を表明しています。
リップルは、このシステムを世界の銀行・記入機関に導入してもらうために積極的な活動を行っています。こういったリップルを利用している銀行が将来的には承認者となり、ネットワークを支えていくこともあり得るでしょう。
ゲートウェイの「カウンターパーティリスク」に注意
リップルネットワーク内のユーザーのXRPおよびIOUの残高は分散型台帳により管理されており、カウンターパーティリスクはありません。
しかし、IOUの発行元であるゲートウェイは、前述した通り銀行のような役割を担っているため、本質的には倒産やハッキングといったカウンターパーティリスクを内包しています。つまり、100万円を預けて100万円分のIOUが発行されたものの、IOUを返還し100万円を再度受け取る前に倒産してしまったり、資産が何らかの組織内外のハッキングによってなくなってしまうという可能性があります(カウンターパーティリスク)。
そのためゲートウェイを利用する際には、その都度利用するゲートウェイがどの程度信用できるかが非常に重要になってきます。つまり、ゲートウェイを担当するIOUの発行企業は、本当に銀行が行うような業務を担える信頼性と体制を持つのかどうかが課題になります。
また、ゲートウェイの中には独自の通貨の代替価値としてIOUを発行している場合もあります。この価値はリップルネットワーク上で分散型台帳に記録されるため、価値の所在や残高の改ざんなどの恐れは担保されています。
しかしIOUの価値はゲートウェイを運営する企業や個人に委ねられていますので、もし悪意のあるゲートウェイならば、円やドルを受け取り、独自通貨のIOUを発行するだけし、そのIOUを返還してももとの円やドルに交換してくれない可能性も十分にあり得るでしょう。