前回は、リング署名で匿名性を高めた暗号通貨「モネロ」の概要を説明しました。今回は、国際決済のための分散型台帳ネットワーク「リップル」の概要を見ていきます。

リップルは「システム利用料」としての目的を持つ

リップル(Ripple)は、2012年に公開された国際決済のための分散型台帳ネットワークです。他の暗号通貨では明確な運営元が存在しないケースが見られますが、リップルの開発と運営は米国シリコンバレーのRipple Labs,Inc.(リップルラボ株式会社。以下、リップル社)が行っています。もとは「OpenCoin Inc.」でしたが、2013年9月に「Ripple Labs,Inc.」に社名変更されました。

 

メインの開発者はジェド・マケーレブ(Jed McCaleb)というベテランエンジニアで、当時、世界でも最大級のビットコイン取引所であったMt.Goxのシステム開発を担当した人物でもあります。

 

コインとしてのリップルは、ビットコインのような通貨としての価値を分散的に実現するという貨幣的な側面とは別の目的を持ちます。

 

リップルは、リップルの分散型台帳ネットワーク(リップルネットワーク)を利用するためのシステム利用料としての目的を持っています。リップルネットワークとは、誰でも使えるグローバルな価値移動の合意形成をとるネットワークです。このネットワークは、それを利用するユーザーと、資産価値を保有・管理するゲートウェイによって構成されます。

性質も技術も暗号通貨とは異なるIOU

リップルネットワークには、ゲートウェイを担当する企業を通じてIOU(I owe you.:借用証明書)が発行されます。このIOUの価値は、ゲートウェイを担当する企業が価値の信用を担保することで設定される中央集権的な資産情報です。

 

例えば、このIOU情報をP2Pでやり取りできるプラットフォームであるリップルネットワークに乗せて価値の移動を行います。このIOUを送る際に、手数料としてリップル(XRP)が消費されます。この消費されたXRPは誰かの手に報酬として渡るのではなく消費、つまり破棄されます。

 

XRPはリップルの開始時に1000億が発行され、それ以上は発行されません。また、現在はその大半をリップル社が保有しています。

 

また、ゲートウェイとなった企業は独自のIOUを任意で発行することができます。IOUの価値はリップルネットワークによって保証されるものではなく、ゲートウェイの企業によって保証されるものである点が他の暗号通貨と異なります。IOUはその性質も技術も暗号通貨とは異なります。

 

リップルを得るには、対応する取引所で購入する方法や、誰かから送金してもらう方法の他にワールド・コミュニティ・グリッド(World Community Grid)と言われる研究開発プロジェクトに貢献することで得ることができます。

 

[ワールド・コミュニティ・グリッドとは]

グリッド・コンピューティング(複数のコンピュータをネットワークで結んだ仮想的な高性能コンピュータから、必要な処理能力や記憶容量を取り出して使うシステム)を構築する世界最大規模の非営利活動プロジェクト、およびそのグリッド・コンピューティングを指します。

 

コンピュータの余剰能力を用いて計算し、結果を送信することで、未知のウイルスや病原体への対応、新薬の開発(バーチャルスクリーニング)につなげるなど、人類の脅威とされる課題の克服に貢献するプロジェクトです。

 

【基本情報】

名称:Ripple

呼び方:リップル

コード:XRP

開発者/開発組織:RippleLabs,Inc.(旧OpenCoinInc.)

コンセンサスアルゴリズム:RippleConsensusAlgorithm

承認目安時間:即時

上限発行量:1000億

 

本連載は、2016年11月24日刊行の書籍『一冊でまるわかり 暗号通貨 2016~2017』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

一冊でまるわかり 暗号通貨2016~2017

一冊でまるわかり 暗号通貨2016~2017

森川 夢佑斗

幻冬舎メディアコンサルティング

電気代を暗号通貨で支払えるようになる――こんなニュースが伝えられるなど、「暗号通貨経済」の到来が間近になっている。本書は「ビットコイン」をはじめとする暗号通貨やそれを支えるブロックチェーンについて、興味を持って…

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