「ここなら最後まで安心」自宅を売却して始めた新生活
83歳の正志さん(仮名)は、同い年の妻・弘子さん(仮名)と有料老人ホームで暮らしています。
夫婦が入居したのは6年前、77歳のときでした。
当時、正志さんは足腰に不安を感じ始めていたものの、夫婦とも身の回りのことは自分でできていました。ただ、築35年の自宅では階段の上り下りや庭の手入れが負担になり、将来の生活が気になっていたといいます。
「子どもたちに迷惑をかけず、夫婦で安心して暮らしたかったんです」
選んだのは、レストランや大浴場、共用ラウンジなどを備えた高齢者向けの施設でした。
夫婦で入居できる広めの居室があり、食事や掃除のサービスも充実しています。職員が24時間常駐していることも決め手になりました。
施設は住宅型有料老人ホームで、介護が必要になった場合は外部の訪問介護などを利用する仕組みです。
入居一時金は夫婦で1,800万円。月額利用料は家賃相当額、管理費、食費などを含めて約32万円でした。
夫婦の年金収入は合計月28万円。税金や社会保険料を差し引くと、手元に残るのは約25万円です。
月額利用料だけで約7万円不足し、医療費や日用品なども含めると、毎月10万円程度を貯蓄から取り崩す計画でした。
それでも正志さんは、十分に暮らしていけると考えていました。
自宅を約3,800万円で売却し、売却に伴う諸費用などを差し引いて約3,600万円を確保。もともとの預貯金約2,500万円と合わせると、入居一時金を支払った後も約4,300万円が残ったからです。
「終の住処にするつもりでした。もう引っ越すことはないと思っていましたね」
入居後の生活は快適でした。食事を作る必要がなくなり、夫婦で館内の催しに参加したり、近所を散歩したりする時間も増えました。
ところが、入居から5年ほどたった頃、弘子さんが転倒して大腿骨を骨折。手術とリハビリを経て施設に戻ったものの、以前のように歩くことが難しくなりました。
車椅子を使う時間が増え、着替えやトイレにも介助が必要になったのです。正志さんは、施設の職員に相談しました。
「ここには介護が必要になっても住めると思っていたんですが……」
