(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の住まいを考える際、食事や掃除の負担が少なく、見守りサービスも受けられる有料老人ホームを選ぶ人がいます。自宅を売却して入居する場合、長く暮らすことを前提に資金計画を立てる家庭もあるでしょう。しかし、入居後に健康状態や必要な介護サービスが変われば、当初の予定を見直すこともあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「介護が必要になっても住めるのでは?」6年目に直面した問題

施設側からは、外部の介護サービスを組み合わせれば生活を続けられるものの、弘子さんの介助が増えた現状では、夜間も含めて必要な支援を確保できるか慎重に検討する必要があると説明されました。

 

住宅型有料老人ホームでは、施設の職員が常駐していても、介護保険による介護サービスを施設自体が一括して提供するとは限りません。

 

弘子さんは訪問介護などを利用するようになりましたが、介護保険の自己負担に加え、保険給付の対象外となる付き添いなどの費用も発生。医療費や介護用品代も増え、夫婦の月々の支出は合計40万円前後になりました。

 

「費用も心配ですが、夜中に妻が困ったとき、私だけでは支えきれません」

 

正志さん自身も83歳。妻の介助を続けるには体力的な限界を感じていました。

 

厚生労働省老健局が公表した『有料老人ホームの現状と課題について』の資料によると、2024年6月30日時点の有料老人ホーム1万7,246件のうち、住宅型は1万2,667件、介護付きは4,560件、健康型は19件でした。施設の種類によって、介護サービスの提供方法や入居継続の条件は異なります。

 

正志さん夫婦が暮らす施設も、介護が必要になったことだけで退去を求められたわけではありません。ただ、弘子さんの状態に合った支援を長期的に確保するには、介護付き有料老人ホームへの住み替えも検討したほうがよいと提案されたのです。

 

正志さんは、離れて暮らす長女に相談しました。

 

「ここで最後まで暮らせると思っていたのに、また引っ越しを考えるなんてね」

 

長女と一緒に家計を確認すると、入居時に約4,300万円あった金融資産は、6年間で約3,300万円に減っていました。

 

現在の支出が続けば、年金の手取りとの差額は月約15万円。今後は住み替え費用も必要になります。

 

さらに、現在の施設に支払った入居一時金については、契約上の償却期間がすでに終了しており、退去しても返還金はありませんでした。

 

「最初の入居一時金を、次の施設の費用に回せるわけではないんですね」

 

夫婦は長女とともに、介護付き有料老人ホームを見学し始めました。

 

夫婦で入居できる居室があるか、介護度が上がっても暮らせるか、入院が長引いた場合の取り扱いはどうなるか。今度は費用だけでなく、契約内容も細かく確認しています。

 

正志さんは、以前の住み替えを後悔しているわけではありません。

 

「ここで過ごした6年間は楽しかったです。ただ、年を取れば必要なものも変わるんですね」

 

高齢者向けの住まいを選ぶ際は、現在の暮らしやすさに加え、介護が必要になった場合のサービス内容や費用、退去条件まで確認しておくことが重要です。長く暮らすつもりで選んだ住まいでも、心身の状態が変化すれば新たな選択を迫られることがあります。将来の住み替えに備えた資金と選択肢を残しておくことが、老後の安心につながります。

 

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