(※写真はイメージです/PIXTA)

退職金や長年の貯蓄によって、まとまった老後資金を確保できた人もいるでしょう。仕事を辞めた後は、旅行や趣味など、現役時代に我慢していたことを楽しみたいと考えるものです。しかし、退職後は収入が限られる一方、生活水準を一度上げると支出を減らしにくくなることがあります。十分だと思っていた資金が、予想以上の速さで減っていく場合もあるのです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「もう節約しなくていい」65歳・8,000万円の安心感

72歳の俊夫さん(仮名)は、メーカーに長年勤務し、65歳で退職しました。

 

妻の美代子さん(69歳・仮名)とは2人暮らし。子どもたちは独立しており、住宅ローンも完済しています。

 

俊夫さんが退職した時点で、夫婦の金融資産は約8,000万円。退職金約2,500万円を含む金額です。

 

「これだけあれば、一生かかっても使い切れないと思っていました」

 

現役時代の俊夫さんは、どちらかといえば堅実な生活を送っていました。家族旅行は年に1回程度で、外食も特別な日に限っていたといいます。

 

ところが、退職後は考え方が変わりました。

 

「今まで働いてきたんだから、これからは好きなことにお金を使おう」

 

最初に購入したのは、約650万円の輸入車でした。以前から憧れていた車で、維持費が高いことも承知のうえで決めたそうです。

 

その年には妻とヨーロッパを周遊し、旅行代金は2人で約180万円。翌年も海外旅行に出かけ、国内の温泉旅館にも頻繁に宿泊するようになりました。

 

「せっかく行くなら、いいホテルに泊まりたい。食事も値段を気にせず楽しみたかったんです」

 

さらに、ゴルフ場の会員権を約200万円で購入。道具の買い替えやプレー代、仲間との食事にもお金を使いました。

 

夫婦の年金収入は合計で月約28万円。税金や社会保険料を差し引くと、手元に残るのは月25万円前後です。

 

一方、日常の生活費は月40万円ほどに増えていました。

 

食費や外食費で約12万円、光熱費や通信費などで約5万円、車の維持費や趣味、交際費などで約15万円。その他の日用品や医療費などを含めた金額です。

 

年金だけでは毎月約15万円が不足しますが、俊夫さんは特に気にしていませんでした。

 

「貯金が8,000万円もあるんだから、少しくらい取り崩しても大丈夫だろうと」

 

旅行や車の購入といった大きな支出に加え、日常的な赤字が続いても、家計簿をつけることはありませんでした。

 

そして退職から7年が過ぎた72歳の春、俊夫さんは久しぶりに夫婦の金融資産を集計します。その数字を見て、思わず手が止まりました。

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