「まだ十分あるはずだったのに」72歳で気づいた貯蓄の減少
夫婦の金融資産は、約3,600万円まで減っていました。65歳時点の8,000万円から、7年間で約4,400万円の減少です。
「半分以上なくなっているなんて、考えてもいませんでした」
俊夫さんが通帳やカードの利用明細を確認すると、旅行や車の購入、趣味などに使った一時的な支出が約3,000万円に上っていました。さらに、毎月の生活費の不足分や住宅設備の交換費用などで、約1,400万円を取り崩していたのです。
妻の美代子さんは以前から支出を気にしていました。
「旅行は楽しかったけれど、そろそろ少し控えたほうがいいんじゃない?」
そう言われるたびに、俊夫さんは「まだ十分あるから」と答えていたといいます。
総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の可処分所得が22万1,544円、消費支出が26万3,979円で、毎月約4万2,000円の不足が生じています。
一方、俊夫さん夫婦の不足額は、日常の生活費だけで月約15万円。さらに旅行などの特別支出が加わっていました。
俊夫さんが不安を覚えたのは、残高の減少だけではありません。
「あと20年生きるとしたら、今の暮らしを続けられるのかと思ったんです」
仮に月15万円の赤字が続けば、20年間で3,600万円を取り崩す計算です。そこには今後の住宅修繕費や医療・介護費用、大きな旅行代などは含まれていません。
しかも、俊夫さんはすでに高額な外食や旅行に慣れてしまい、急に生活を変えることへの抵抗も感じていました。
「昔は1泊1万円の宿でも十分楽しめたのに、今はもっといい部屋を探してしまうんです」
夫婦は話し合い、まず海外旅行を毎年の恒例行事にすることをやめました。車も次の買い替えでは国産車を検討し、ゴルフの回数を減らすことにしています。
日常の生活費についても、月40万円から32万円程度への見直しを目標にしました。
「使ったお金を後悔しているわけではありません。ただ、これから先の暮らしまで考えていなかったんです」
俊夫さんは、そう振り返ります。
まとまった貯蓄があると、日々の支出を細かく気にせず生活できる安心感があります。しかし、退職後の資金には限りがあり、年齢を重ねるにつれて新たな出費が必要になる可能性もあります。老後の楽しみにお金を使いながらも、残された資金と今後の生活費を定期的に確認することが、長く安心して暮らすための備えとなります。
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