(※写真はイメージです/PIXTA)

年末年始や連休を利用して、離れて暮らす親のもとへ帰省する人は少なくありません。久しぶりに顔を合わせることで、電話ではわからなかった親の変化に気づくこともあるでしょう。一方、親にとっても、子どもの帰省は楽しみな行事です。そのために普段以上の準備をして、無理を重ねてしまう場合もあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「正月は帰らないほうがいいかも」息子が考え直した帰省の形

3日目の朝、浩一さんは母に尋ねました。

 

「普段から、こんなに料理を作っているの?」

 

母は首を横に振りました。

 

「いつもはお父さんと2人だから簡単に済ませているわよ。昨日みたいな料理は久しぶり」

 

さらに話を聞くと、母は浩一さんの帰省に合わせ、数日前から買い物や掃除を進めていたといいます。父も庭の草取りや客用布団の準備を担当し、普段より忙しく過ごしていました。

 

「帰ってきてくれるのがうれしいからね。つい張り切っちゃうのよ」

 

母の言葉に、浩一さんは返す言葉がありませんでした。

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上の人のうち、ふだん「ほとんど毎日」外出すると答えた割合は55.4%でした。70~74歳では60.0%ですが、80~84歳になると45.9%に下がっています。年齢を重ねるにつれ、日常の活動状況にも変化が見られます。

 

もちろん、73歳だからといって家事や外出が難しくなるわけではありません。ただ、浩一さんには、以前と同じように両親を頼っていた自分への反省がありました。

 

「帰省すると、いつも母さんが料理を作ってくれるのが当たり前になっていたんです」

 

実家では食事も洗濯も親任せ。両親が疲れていないか、考えたこともほとんどありませんでした。

 

帰り際、浩一さんは両親に伝えました。

 

「正月は、無理して帰らないほうがいいかもしれないね」

 

すると母は、少し寂しそうな顔をしました。

 

「どうして? 帰ってきてくれたほうがうれしいわよ」

 

浩一さんは慌てて言葉を補いました。

 

「帰りたくないわけじゃないよ。ただ、またこんなに準備させるのは申し訳ないから。今度は俺がご飯を用意するし、掃除もしなくていいよ」

 

父も「そこまで気を使わなくていい」と笑いましたが、母は少し考えてから「それなら、今度はお弁当でも買ってこようかしら」と答えました。

 

帰宅後、浩一さんは妻に今回の出来事を話しました。

 

次の年末年始は、家族3人で日帰りか1泊の帰省にすることも検討しています。食事は持参するか外食にし、客用布団の準備が負担になるようなら近くのホテルを利用するつもりです。

 

また、以前より家事が負担になっていないか、電話でも少しずつ聞くようになりました。

 

「親が元気なうちに帰っておきたい気持ちはあります。でも、帰るたびに疲れさせていたら意味がないですよね」

 

親子が離れて暮らしていると、帰省は互いの近況を知る貴重な機会になります。しかし、迎える側の親も年齢を重ね、以前は当たり前にできていた準備が負担になることもあります。親の変化に合わせて滞在日数や過ごし方を工夫することが、これからも無理なく帰省を続けていくための大切な配慮となります。

 

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