「近くに住めば、もっと会えると…」娘を頼りに決めた住み替え
74歳の美佐子さん(仮名)は、1年前からシニア向け分譲マンションで一人暮らしをしています。夫は5年前に亡くなり、年金収入は遺族年金などを含めて月約18万円です。
以前は郊外の一戸建てに住んでいましたが、庭の手入れや階段の上り下りが負担になり、住み替えを考えるようになりました。
「一人で暮らしていると、家の管理も全部自分でしないといけません。娘からも、もう少し便利な場所に住んだらと言われていたんです」
美佐子さんには、46歳の一人娘がいます。娘は夫と高校生の息子との3人暮らしで、仕事も続けています。
住み替え先を探す際、美佐子さんが重視したのは、娘の家から近いことでした。
見つけたのは、娘の自宅から車で約30分の場所にある中古のシニア向け分譲マンション。スーパーやクリニックが徒歩圏内にあり、共用ラウンジや入居者向けの交流スペースも備わっています。
「娘に何かしてもらおうというより、近くにいれば、お互い安心だと思ったんです」
自宅を売却した資金などを使い、約2,400万円で購入。管理費や修繕積立金、見守りサービスなどの費用は合わせて月約4万円です。
食費や光熱費などを含めた毎月の支出は約17万円。税金や社会保険料の負担もあるため、年金だけで十分な余裕があるわけではありませんが、預貯金も確保しており、当面の生活に不安はありませんでした。
入居当初、娘は引っ越しの片づけを手伝い、休日には孫を連れて遊びに来てくれました。
「新しい部屋を見てもらったり、一緒に近所でお昼を食べたり。これからはこんな時間が増えるのかなと思っていました」
ところが、娘の訪問は次第に減っていきます。
娘は仕事が忙しく、孫も部活動や受験準備で予定が埋まるようになりました。美佐子さんから食事に誘っても、「今月は難しいから、また連絡するね」と返ってくることが増えたそうです。
やがて、最後に顔を合わせてから半年が過ぎました。
「車なら30分なんです。遠くに住んでいた頃と、会う回数があまり変わらなくて……」
娘とは月に数回LINEでやり取りしています。それでも、美佐子さんは近くに住めば自然と会う機会が増えると思っていた自分に気づきました。
