(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になると、以前は当たり前にできていた家事が少しずつ負担になることがあります。掃除や片づけを後回しにしているうちに、生活空間が散らかり、家族との関係にも影響する場合があります。本人たちは今の暮らしに大きな問題を感じていなくても、離れて暮らす子どもから見れば心配な状況かもしれません。親の生活をどこまで支えるべきか、家族の間で意見が分かれることもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「もう勝手にして」散らかった家をめぐり、息子が送ったLINE

74歳の信夫さん(仮名)と72歳の妻・文子さん(仮名)は、築38年の一戸建てで暮らしています。夫婦の年金収入は合わせて月約21万円。住宅ローンは完済しており、預貯金も約1,200万円あります。

 

2人とも日常生活に介助は必要なく、近所への買い物や通院も自分たちでできています。

 

ただ、ここ数年で家事の負担が増えてきました。

 

文子さんは膝の痛みがあり、床にかがんで掃除をするのがつらくなっています。信夫さんも腰を痛めてから、重いゴミ袋を運ぶことを避けるようになりました。

 

「昔は毎日掃除していたんです。でも、少しくらい散らかっていても困らないと思うようになって」

 

最初は、新聞や郵便物をテーブルに置きっぱなしにする程度でした。やがて、総菜を買ってきた日の容器や飲み終えた缶も、すぐには片づけなくなります。

 

ゴミの収集日は週に決まった回数ありますが、分別が面倒で出しそびれることも増えました。

 

「次の収集日に出せばいいと思っているうちに、たまってしまうんです」

 

特に散らかっていたのは、普段使っていない和室でした。処分する予定の古い家電や衣類に加え、まとめた空き缶や紙類も置かれ、部屋の半分ほどが物で埋まっていました。

 

夫婦には、車で40分ほどの場所に暮らす45歳の息子・亮介さん(仮名)がいます。

 

月に1度ほど実家を訪れていた亮介さんは、部屋の状態が悪くなっていることに気づき、何度も片づけを勧めていました。

 

「ゴミをためると虫が出るし、転んだら危ないよ。一度、業者に頼んで片づけよう」

 

しかし、信夫さんは「そんな大げさなことをする必要はない」と取り合いません。文子さんも、息子に心配をかけたくない気持ちから「少しずつ片づけているから大丈夫」と答えていました。

 

夏の終わり、亮介さんが実家を訪れると、台所には総菜の容器が積み重なり、床には空き缶が入った袋が置かれていました。

 

亮介さんは、その場で自治体の粗大ゴミの申し込み方法を調べ、片づけ業者の見積もりも取ろうと提案しました。

 

ところが、信夫さんは「勝手に決めるな。自分の家のことは自分でやる」と声を荒らげます。

 

亮介さんも「心配して言ってるのに、いつもそうだよね」と言い返し、その日は早々に帰ってしまいました。

 

翌日、信夫さんのスマートフォンにLINEが届きました。

 

「もう勝手にして。何度言っても聞いてくれないなら、俺もこれ以上は何も言わない」

 

信夫さんは画面を見つめたまま、しばらく動けなかったといいます。

次ページ「息子に頼りきりだった」夫婦の生活の立て直し

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