分配金を受け取り続けた男性の誤算
浩二さんが購入した投資信託の評価額は、4年後に約1,220万円となっていました。一方、これまで受け取った分配金は、税引き後で合計約210万円です。
両方を合わせると約1,430万円。投資した1,500万円を約70万円下回っていました。
「分配金をこれだけ受け取っているのに、全部合わせてもマイナスだったんですね」
さらに取引報告書を確認すると、分配金の一部が「元本払戻金(特別分配金)」として扱われていることに気づきます。
投資信託の分配金には、運用状況などに応じて課税対象となる普通分配金と、投資元本の一部を払い戻す特別分配金があります。分配金は投資信託の純資産から支払われるため、支払いに相当する分だけ基準価額が下がる仕組みです。
金融庁『資産運用業高度化プログレスレポート2023』で引用されている投資信託協会の2022年調査によると、投資信託の保有者・保有経験者のうち、「分配金として元本の一部が払い戻されることもある」と理解している人は37.4%でした。
浩二さんも、元本払戻金という言葉は聞いたことがありました。しかし毎月受け取るお金のうち、どれだけが運用益で、どれだけが元本の払い戻しに当たるのか、確認していなかったのです。
「投資経験があるから、ある程度わかっているつもりでした。毎月振り込まれると、どうしても利益をもらっている感覚になってしまいますね」
もちろん、今回の損失がすべて分配金によって生じたわけではありません。投資対象の価格変動や為替相場、運用コストなども運用成績に影響しています。
浩二さんは金融機関に相談し、今後の生活費に必要な資金を確認したうえで、投資信託を保有し続けるか、別の商品に変更するか検討することにしました。
「毎月いくら入るかより、資産全体がどうなっているかを見ないといけませんね」
退職金の運用では、定期的な収入が得られる安心感に目が向きやすいものです。しかし、分配金の受取額だけでは運用成果を判断できません。現在の評価額と受取総額を合わせて確認し、資産全体の増減を把握することが大切です。
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