「また一緒に食べられたら…」夕食会を失った73歳母の後悔
それから数日後、和也さんからLINEが届きました。
「しばらく、日曜日のご飯はやめようと思う」
節子さんは、画面を見つめたまま動けなかったといいます。
「毎回楽しみにしていたので、急になくなるなんて考えてもいませんでした」
夫の敏夫さんに相談すると、意外な言葉が返ってきました。
「俺も、前から少し気になっていた。和也たちが来るたびに、食事のことを言っていただろう」
敏夫さんは、妻が悪気なく口にしていることを理解していました。それでも、息子夫婦が気まずそうにしている様子を何度か見ていたそうです。
「だったら、どうして教えてくれなかったの?」
節子さんがそう尋ねると、敏夫さんは「俺も言いにくかったんだ」と答えました。
内閣府『第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査』(2020年)によると、日本の高齢者のうち、別居する子どもと「月に1~2回」会ったり電話などで連絡を取ったりする人は24.1%、「週に1回以上」は20.0%、「ほとんど毎日」は10.9%でした。
親子が離れて暮らしていても、定期的に交流する家庭はあります。ただし、こうした交流を無理なく続けるためには、お互いの生活や考え方を尊重することも欠かせません。
節子さんは、これまでの食卓を思い返しました。
息子一家が来る日は、朝から料理を作り、孫の好きなものを用意していました。しかし、その一方で、息子夫婦の生活について自分の考えを押しつけていたのかもしれません。
「私はご飯を作ってあげているんだから、少しくらい意見を言ってもいいと思っていたんです」
しばらく悩んだ末、節子さんは和也さんに連絡しました。
「今まで、余計なことを言ってごめんなさい。奥さんにも謝っておいてね」
和也さんからは、「わかってくれてありがとう」と返信がありました。
ただ、以前のように日曜日の夕食会を再開する話にはなりませんでした。
「寂しいですけど、今までどおりに戻してほしいとは言えません。向こうにも生活がありますから」
それからは、孫の誕生日に短いメッセージを送ったり、息子から近況の連絡を受けたりする程度の交流が続いています。
節子さんは、夫婦2人で食卓を囲みながら、以前の賑やかな日曜日を思い出すこともあるそうです。
「また一緒にご飯を食べられる日が来たらうれしいです。今度は余計なことを言わずに、楽しく過ごしたいですね」
親子の間では、心配や親しさから、相手の生活に踏み込んだ言葉をかけてしまうことがあります。しかし成人した子どもには、その家庭なりの暮らし方があります。長く良好な関係を保つためには、相手の立場を尊重し、言葉の受け取られ方にも目を向けることが大切でしょう。
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