社会保険料の対象となるのも「厚生年金の被保険者として受けている給与のみ」
これは社会保険料にも関係します。2つの法人で代表役員を務めていたとします。その場合の社会保険料は2つの会社の報酬を合算した上で標準報酬月額に当てはめます。それから按分した保険料を双方で納めます。
たとえば、A社の給与が40万円、B社の給与が20万円だった場合は次のようになります。
→標準報酬月額は59万円(健保33・厚年30等級)
→保険料をA社 40/60、B社20/60として按分して負担
もし、どちらか片方が個人事業主としての所得であれば、社会保険加入義務も一方のみとなります。仮にA社が法人、B社の事業は個人事業主として行っているのであれば、社会保険料の対象となるのはA社からの給与のみです。その場合、社会保険料は大幅に減額されます。
一般的には65歳定年でそれ以降は社会保険についてそこまで深く考えないかもしれませんが、経営者の場合は生涯現役ということもあり得ます。代表役員を続けていれば厚生年金は70歳まで、健康保険は75歳まで加入することとなります。
すなわち社会保険料控除が続くということなので、何個かポイントを押さえておくべきでしょう。
生涯現役の経営者が押さえておくべきポイント
1. 老齢厚生年金
65歳定年でそのまま仕事をしなければ老齢厚生年金の額は物価や賃金水準などに応じた改定はあるものの、大幅な変化はありません。
しかし、65歳以上も厚生年金保険の被保険者として給与を得ていた場合には年1回、9月1日を基準日としてそれまでの保険料納付実績に応じて、10月分(振込は12月)から老齢厚生年金が増額されます。70歳まで被保険者であれば、5回は年金額が伸びます。
もし、支給停止調整額のラインでバランスをとっていた場合は都度の再検討が必要になる可能性があります。
2. 健康保険
健康保険についてもしっかり検討するのは大事です。同じく退職後、社会保険加入条件を満たす形で仕事をしなければ、以降は国民健康保険に加入するかたちとなります。
国民健康保険はすべての所得から保険料が計算されるのと、被扶養の概念がないため、保険料が割高になることがあります。引退後、保険料の負担が大きくなったと感じる方にはこれらが要因となっているケースが多いです。
健康保険についても、保険料は被保険者としての給与所得のみで計算されます。個人事業主としての収入は無関係です。半額が法人負担、被扶養の概念ありということも大きいといえます。特に被扶養に関しては60歳以降であれば年間所得180万円未満(月15万円未満程度)と、それまでのいわゆる「130万円の壁」から引き上げられます。
配偶者で考えてみます。ずっと専業主婦で結婚前の勤務期間が短く老齢厚生年金の上乗せがほぼないという状況であれば、2つの老齢年金を合わせて月8万円程度。あと月7万円ほどは何らかの収入があってもそのまま被扶養者とできるわけです。もし、共働き期間があり老齢厚生年金がそれなりに受給できる状況でも、月8万円弱程度であれば被扶養の枠内に収まります。
ほかにも、子が大学院在学中などの場合でも要件を満たせば被扶養者にできます。75歳になると現役であっても後期高齢者医療に切り替わりますが、それまでの期間は健康保険に加入できるのも、被扶養者がいる場合や所得がそれ以前より伸びる場合などはメリットといえるでしょう。
「国保逃れ」とは無関係なのでご安心を
このように社会保険料が安くなるというと以前問題となった「国保逃れ」の話から不安になる方もいるかもしれません。
この件は真っ当な経営者とは無縁の話です。国保逃れについては個人事業主やフリーランスなどが実態のない法人の役員に形式的に就き、報酬を極端に低く設定(1万円など)することで不当に社会保険料を抑え、その法人に裏でコンサル料などの名目でお金を納めるという仕組みです。
以前、議員が行って問題となりましたが、国会議員でみれば年収は2,000万円ほど。当然、国民健康保険料は最大値になります。ところが、実態のない法人の役員として報酬が月1万円となれば最低クラスの保険料になります。月9万円を超える保険料が個人負担で3,000円程度になってしまえばおかしいのは当然です。
仮にかなりの収益がある個人事業主の方が後からペーパーカンパニーを作って保険料を不当に下げるのは問題です。しかし、きちんと活動している法人の経営者としてそれなりの報酬を受けていれば問題ありません。とはいえ、不審なコンサルティングなどにはご注意ください。
遠藤 和成
牛町社会保険労務士事務所
代表社会保険労務士
