「業務委託だから残業代はいらないよね?」業務委託契約の終了から1ヶ月後に届いた内容証明〈請求額700万円〉に、43歳社長が愕然【社労士が「労働者性」を解説】

「業務委託だから残業代はいらないよね?」業務委託契約の終了から1ヶ月後に届いた内容証明〈請求額700万円〉に、43歳社長が愕然【社労士が「労働者性」を解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人手が足りない、でも社会保険料の負担は重い。そんな事情から「雇用ではなく業務委託で」と考える経営者は少なくありません。しかし契約書の表題が「業務委託契約書」であっても、働かせ方の実態によっては労働基準法上の「労働者」と判断されることがあります。そうなれば未払い残業代と社会保険料の遡及が、一度に会社へ降りかかります。判断を分けるのは何なのでしょうか。企業の労務支援に強い社労士の桐生由紀氏が解説します。

社会保険料を避けて“業務委託”を選んだ43歳社長の判断

菊池社長(仮名・43歳)は、都内でBtoB向けSaaSを提供するベンチャー企業を経営しています。創業7年目となる同社の従業員数は18名。創業以来、菊池社長はずっと採用に苦しんできました。

 

「営業を1人増やしたい。でも、正社員で採ると社会保険料の会社負担が乗るし、成果が出なかったときに簡単には辞めてもらえない」

 

そこで選んだのが、業務委託契約でした。菊池社長は、3年前に知人の紹介で出会った佐野さん(仮名・34歳)と月額45万円の営業代行契約を結びます。独立して間もない佐野さんにとっても、固定で月45万円がもらえるのは魅力的な条件でした。

 

「お互いに気持ちよく、対等なパートナーとしてやっていこう」

 

菊池社長は本気でそう思っていました。ただ、始まってみると業務の任せ方は少しずつ変わっていきます。

 

朝9時30分の朝会に毎日参加してもらう。日中はチャットツールに常駐し、返信は30分以内。日報は毎日18時30分までに提出。訪問先は社長が指示し、商談資料もトークスクリプトも会社が用意したものを使ってもらう――。佐野さんは他社の仕事を受けている様子はなく、繁忙期は帰社後の報告作業で21時を過ぎ、土曜日に商談が入る月もありました。

 

報酬は契約件数にかかわらず毎月45万円で、菊池社長は売れない月も満額を支払い続けていました。

 

「彼をうちのメンバーとして扱っているつもりだった。それが誠意だと思っていたんです」

 

1ヶ月前に業務委託契約の終了を告知

順調だったのは2年半ほどで、その後は主要顧客の解約が続き、資金繰りが厳しくなってきました。3年目の冬、菊池社長は佐野さんに契約終了を伝えます。

 

「申し訳ない。来月末で契約を終わりにさせてほしい。業務委託だから、1ヶ月前に言えば問題ないよね」

 

菊池社長の言葉に、佐野さんは黙ってうなずきました。ところがその1ヶ月後、菊池社長のもとに内容証明郵便が届きます。差出人は佐野さんの代理人でした。

 

書面には、「本件契約は実質的に労働契約であり、契約終了は解雇にあたるため無効である」という主張と、3年分の未払い残業代を請求する旨が記されていました。月60時間前後の時間外労働を前提に積み上げられた金額は、およそ700万円に上ります。

 

「業務委託ですよ? 契約書もある。ハンコも押してもらっている。なぜこんなことになるんですか」

 

次ページ契約書の表題は関係ない…裁判所が見るのは「働かせ方の実態」

※プライバシーに配慮するため、登場人物の情報に一部変更を加えています。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧