高所得層は「対象外」
また、これは支給停止調整額ライン付近の方の対策なので、月200万円の給与がある弁護士法人の代表などの極めて高所得な層には使えない対策です。
そのような方ですと特別な事情がない限り十数万円のために給与を半額以下にする意味はないので、大幅給与ダウンで老齢厚生年金を受給するというのは賢明ではありません。納めた社会保険料は残念かもしれませんが、障害・遺族年金といった保険にお世話にならず済んだ、社会保険には所得再分配の機能もあるのでその面で貢献できたとお考えください。
支給停止調整額が撤廃されたり大幅に引き上げられたりした場合には老齢厚生年金が受給できる可能性はあります。もし、社労士と顧問契約をしていれば提案があるでしょう。
繰下げ受給の場合も支給停止調整額は適用される
冒頭で繰上げ受給の話を出しましたが逆の繰下げというものもあります。これは最大10年(75歳から支給)繰下げが可能で、1月ごとに0.7%、最大で84%の増額となります(昭和27年4月1日以前生まれの方は70歳まで、最大42%)。
そして、繰上げと違い老齢厚生年金と老齢基礎年金を別の扱いにできます。すると、支給停止の老齢厚生年金だけを繰下げればいいのでは、などと考える方がいるかもしれませんが、これは不正解です。
増額の計算対象になるのは支給予定額分のみです。先の例で見ると本来老齢厚生年金は10万円でも停止額があるため8.5万円支給という方であれば、増額対象になるのは8.5万円分のみです。全額停止の場合は全く変動しません。
毎年変動する支給停止調整額や先の繰下げのシステムは、内容の誤解が発生しやすい傾向があります。こうした点は社労士の専門分野になりますので、60代が近くなった、定年後のプランニングをしたいといった方は社労士にぜひ相談してみてください。
遠藤 和成
牛町社会保険労務士事務所
代表社会保険労務士
