「仕事ができる人」が定年退職後、再就職難に?
近年、定年退職後も働き続ける高齢者は増え、総務省統計局が2026年9月に公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、2025年の65歳以上の就業者数は943万人と、過去最多を更新しました。
今回の正弘さんのように、経済的な余裕がありながら、自分の経験を活かしたいと考える人も多いでしょう。
正弘さんは大企業の経理部長として豊富な経験を持っていました。業務改善の着眼点自体は間違っていなかったのかもしれません。
しかし、現場の店長には店長の仕事があり、会社全体のルールや本部との関係、従業員の事情などさまざまな制約があり、大企業で経理部長を務めていた正弘さんならそうした組織の事情も理解できたのではないでしょうか。それにもかかわらず、自分の提案が採用されないことを理由に、相手を見下すような態度を取ってしまいました。
近年、部下や年下の同僚から上司に対して行われるこうした嫌がらせは「逆パワハラ」として社会問題化しています。一般にパワハラというと、上司が部下に対して暴言を吐いたり、無理な仕事を押しつけたりすることをイメージされますが、パワハラは上司から部下への行為に限定されるものではありません。
こうした言動によって相手に精神的な損害を与えた場合には、民事上の損害賠償責任を問われる可能性もあります。
もし職場の方針にどうしても納得できないのであれば、改善提案を行うだけでなく、自分に合った別の職場を探すことも選択肢の一つです。相手を無理に変えようとして傷つける必要はないでしょう。
また、正弘さんが立ち上げた財務コンサルティング事業が行き詰まった原因も、ホームセンターで起きた問題と根底で通じています。
ビジネスにおいて必要とされるのは、「自分がなにをできるか」の誇示ではなく、「相手がいまどんな課題を抱え、なにを求めているか」に寄り添う姿勢です。相手の事情を汲み取らず、一方的に正論を押し付ける姿勢のままでは、どれほど立派な肩書や資格があっても顧客の信頼を得ることはできません。
定年退職は、長年勤めた会社での役割を終える一方で、新しい人生を始める機会でもあります。現役時代に培った知識や経験は大きな財産です。しかし、それがそのまま新しい環境で求められるとは限りません。正弘さんのように、仕事への熱意や豊富な知識を持ちながら、周囲との人間関係を壊してしまえば、自信を失い、その後の就労へのメンタルブロックにも繋がり、余裕があると思われた老後の生活そのものを不安に染め上げてしまいかねません。
老後の生活設計において大切なのは、手元にいくらの資産があるかという数字の多寡だけではありません。「周囲に敬意を払い、どのような人間関係を築きながら社会と心地よく繋がっていくか」という視点を持つことこそが、真に安心できるセカンドライフを支える土台となるのです。
小川 洋平
FP相談ねっと
ファイナンシャルプランナー
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
【注目のセミナー情報】
【Bar投資「お酒の美術館」】10月31日(土)
飲食業界未経験からBarオーナーに!
利回り年40%も狙える仕組みを解説
【大阪・民泊運営】10月31日(土)
「カジノ特需×規制強化」で参入チャンス到来か?
実質利回り15%以上を目指す仕組み
【資産形成】11月5日(木)
富裕層のための「資産防衛と運用」
相続を見据えた「資産の守り方・育て方」のコツ


